社会的な支援を必要とする人を様々な形からサポートする社会福祉活動。特に、社会から孤立してしまった若者や子どもを中心に支援の手を差し伸べている鈴木さんに、やりがいや活動内容などを伺いました。
子どもたちにやってあげている、とは思いません。一緒に何かをする。だから、子どもとは常に対等だと思っています。
鈴木さんは、学生時代から社会福祉活動に興味があったのですか?
鈴木 いえ、全くありませんでした。もともと私は、学校の成績がオール1で本当に勉強ができなかったんですよ。授業中は呪文を聞いている感じで、ずっと苦痛でした。高校に入学したのも、同級生はびっくりしていたくらい。でも、学校は楽しかったんです。それで、授業が面白くなれば1日ハッピーだったなと思い、自分なら楽しい授業ができるって思いこんでいました。それで教師を目指し、大学卒業後は県立高校の社会科常勤講師になりました。
そこから社会福祉活動を始めたきっかけは何だったのですか?
鈴木 常勤講師時代に、家庭の事情から退学せざるを得ない子どもたちに出会ったことです。その子たちが私のところに相談に来て、「本当は学校を辞めたくない、もっと学びたい」と言うんです。それで、学校で学べないのであれば、学校の外で学ぶ場を作ったら良いのではと思い、教職の道から変更してフリースクール作りを始めたのがきっかけです。
具体的に、どんなことをしたのですか?
鈴木 当時は全くやり方がわからなくて、まずは不登校の子を持つ保護者などとフリースクールの準備会を作りました。どういう場所が良いか、お金はどうするかなど、議論する場です。ちょうどその頃、福島市でビーンズふくしまというNPO法人がフリースクールをはじめたことを聞き、そこで働きながらノウハウを学びたいと思い、お願いをしました。そして、ボランティアで参加させてもらいました。それからは、郡山で準備会の話し合い、福島でボランティア、あとは生活のためにアルバイト。売れる前の芸人みたいな生活でしたね。
ボランティアではどのようなことをしたのですか?
鈴木 私が関わっていたフリースクールは、生徒本人がいろんなプログラムから時間割を決めるようになっていました。基本的には子ども主体でやりたいことをプログラム化していますが、必要に応じて大人が手助けするような仕組みでした。そのため、主に子どもたちのサポートですね。3年くらいボランティアをしていましたが結局、準備会はとん挫してしまったのでその後は「ビーンズふくしま」のスタッフとして様々な活動をするようになりました。
フリースクール以外に、どのような活動をしたのですか?
鈴木 大まかに言うと、新たに出会った子どもたちを支援する活動です。フリースクールのスタッフをしている時に、今度はスクールに通えない子に出会いました。フリースクールって誰でも通えると思われがちですが、違うんです。実は、スクールの月謝は全国平均で33,000円。結構高くないですか?学校と違い助成がないから仕方ないのですが、経済的な問題で通えない子もいたんです。そこで、今度はその子のために何かできないかと考えてプロジェクトを立ち上げました。現場にいると常に困っている子に会うんです。学校でも、フリースクールでも。そうやって、出会った子のためにどんどんプログラムやプロジェクト、事業やNPO法人を作っていきました。就労支援をする地域若者サポートステーション、高卒認定サポート教室という無料の塾、子ども食堂なども関わりましたね。
活動をしていて、難しいと思うことは?
鈴木 違う価値観に出会ったときです。私も他の価値観を受け入れないと、子どもたちの居場所は広がりません。例えば、私は学校に行くことも行かないことも子どもの意思を尊重する立場です。でも、学校に行かないのは悪と言う人もいます。そういう人と言い争うのではなく、互いに尊重して議論したいと思っています。考え方が違うと思っても、人としてリスペクトする。受け入れないと、自分たちの思想に子どもたちを囲うことになってしまうから。社会にはいろんな考え方があって、その中で子どもたちは守られるべき存在なんです。だから、僕らが持っている考えを子どもに押し付けるのは違うと思っているので、大人の「良かれと思って」はだめなんです。
今はどのような活動が主なんですか?
鈴木 2015年にフリーランスになってからも、子ども・若者支援が主です。最近私が力を入れているのは、「こおりやま子ども若者ネット」です。これは、地域で子ども・若者に関わる支援団体13団体と1個人で形成されるネットワーク組織です。団体間の情報交換(毎月行われる車座会議)だったり、地域課題の発見、啓発イベントなど企画したりしています。このネットワークを基盤として、支援者支援や課題解決の為のプロジェクトつくりなどをしていきたいと思っています。他県を見ても、子ども・若者、特に不登校の分野でフリーランスで活動する人はほぼいないんですよ。でも、私は人がやっていることに興味がないんです。だから、今までの活動も教えてくれる人がいないので自分で学ぶしかなかった。でも、やりたいことをやりたいと思っていたし、大変でも自分で力を身につけた方が良いと思い、取り組んできました。学校は子どもにとって一日の大半を過ごす場所だから楽しくあってほしいと思っていますが、そこから排除されてしまう子どもたちがいる限り、私はこれからもその子たちの力になることにこだわっていきたいと思っています。
今後取り組みたいと思っていることを教えてください。
鈴木 今、若い人たちが社会福祉に興味を持っていろいろ活動し始めています。今は、10年前と比べても活動しやすくなったと思いますが、まだまだ大変そう。だから、後輩が活動しやすいような、支援者支援の仕組みを作りたいです。支援について学べる場だったり、資金の問題があるなら基金を作ったりして、社会活動をしたいと思う人が専念できる仕組みや社会づくりが出来たら良いなと思います。
こおりやま子ども若者ネット https://kowakanet.localinfo.jp/
- こおりやま子ども若者ネット 代表 鈴木 綾(すずき りょう)さん
- 出身地
- 福島県福島市
- 出身校
- 青森大学社会学部
- 座右の銘
- 「くれない」族になるな…「~してくれない」と相手に求めるより自分が能動的にやる)
※この記事はaruku2019年11月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。