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公開日:
2019.12.19
更新日:
2020.5.15

書道家| プロフェッショナル夢名鑑 

書道家| プロフェッショナル夢名鑑 

想いを文字に込め、表現する書道家。今回は福島県だけでなく、海外にも出向く「旅する書道家」として活動する千葉清藍さんにお話を伺いました。

書道とは、美しい文字を書くことだけでなく、メッセージを伝えること。

雅号の「清藍」は恩師からもらった清と、福島で見た日が沈む瞬間の空の青さから藍を合わせたそう。

子どもの頃から書道が好きだったのですか?

千葉 はい。子どもの頃から絵や書道のコンテストで賞をもらうことが多く、好きになっていきました。そこで、11歳の時に自分から習字を習い始めました。他にも習い事をしていましたが、続いたのは習字だけ。その後は芸術科のある学校に進み、テレビ番組の制作会社に就職したのを機に福島県に来ました。それからは放送関係の仕事をしながらも書道を続け、2009年から「千葉清藍」という雅号(がごう ※書道用の名前)で活動をはじめました。

初めはどのような活動だったのですか?

千葉 郡山にあるカフェの一角で、個展を開きました。その場の空間を意識した作品を展示していたのですが、見た方から厳しい意見をもらったんです。「空間には馴染んでいるけれど、書からメッセージが感じられない」と。私も個展用の作品を書いていて、気持ちがこもっていない実感はあったんです。それで一度外へ出てみようと思い、2010年5月から書道の道具をもって県内の全市町村を回り、自然の中で書を書くことを始めたんです。

なぜ外に出ようと思ったのですか?

千葉 自然の中で書くことで、気持ちを込められる気がしたんです。文字も、インスピレーションで決めていました。例えば、伊佐須美神社ではあやめが咲いていて、そこにちょうど雨が降り色彩が増して見えたので、「彩」に「雨」と書いて「彩雨(あやめ)」という作品を書きました。その時感じるままに書くことで迷いもなくなり、また書くのが楽しくなったんです。書く自由さや人の感性にも新鮮さがあることを学びました。たまに「何を描いているの?」と見ていく人もいたのですが、絵を描いていると思われることが多くて、びっくりされることもありました。

その旅は、いつまで続いたのですか?

千葉 2011年11月です。本当は、4月に三春の滝桜を最後に旅を終えようと思っていたのですが、残りの6市町村で東日本大震災が起こってしまいました。いろんな思いがありましたが、全市町村回ろうと決意して、滝桜から震災後のスタートを切りました。その時、鎮魂と復興の願いを込めて、桜を前に「咲」という字で「わらう」と読む作品を書いたんです。この時、多くの人々に笑顔が戻ってほしい気持ちと同時に、これからの人生、覚悟をもって書道家として生きようと自覚しました。

書道家として、どのような活動をしているのですか。

千葉 今は主に4つの活動をしています。書道の講師、作品制作、パフォーマー、そして和紙や会津桐などを子どもたちへ伝え継ぐプロジェクトです。福島県全市町村書道の旅の後、仮設住宅で書道教室を開催し、講師として指導にあたりました。その後、2012年に「福島現代美術ビエンナーレ」に参加したのを機に再び声をかけてもらい、シカゴ郊外にある日本庭園で書のパフォーマンスをしました。するとまたそこからご縁があり、という形で今は毎年アメリカの数都市を2ヶ月くらいかけて回り、海外でも書道を教えています。

ひとつの作品を制作するにはどのくらい時間をかけるのですか?

千葉 一概には言えませんが、いつまでに必要か、どのようなことを大切に思い、望まれているかなどをふまえて制作しています。だから材料も納期も毎回話合いで決まります。もちろん、何千枚書いても自分が良しとする字が書けないときもあれば、一枚目が一番良かったということもあります。作品が生まれるまでの時間は毎回違うので、日々のトレーニングは必須ですね。

トレーニングは、どのようなことをするのですか?

千葉 お手本を見て書くのと、自由に書くのと半々です。先人達の書や書道界の大先輩の字をまねて書くことは、私の中で書道に対する学びと敬意です。それを忘れてしまうと、自分の道から外れてしまうような怖さがあります。書道とは清流のようで、水が留まっていても濁るし、はみだし過ぎても環境自体を壊してしまうと思うんです。だから、先人や先輩たちの書から学ぶことも、自由に書くことも大事にしています。そして、毎日筆を握り、練習することもとても大切だと思っています。

練習量も大事なのですか?

千葉 はい。特に、パフォーマーとして式典などの場で書く場合では顕著です。納得いくまで練習して臨みますが、書く場所の環境に左右されることが多いんです。外か中か、気温や湿度の違いで墨の乾き具合も変わってしまいますので、日々のトレーニングによる安心感と、自分の経験値や技術で自分自身との勝負になります。パフォーマンスの時は、緊張している暇なんてないんですよ。

今後の目標は?

千葉 今までは自分の書を残すより、講師やパフォーマンスなど書から生まれる時間や、一瞬の美しさを大事にする傾向がありました。でも最近は、いつまでも残る作品を追求しています。書道家になり今年でちょうど10年なのですが、これからも縁や繋がりを大切に、作品を残す作業をしながら、世界中の人々に書の魅力を伝えていきたいと思っています。

三春の滝桜前で書く千葉さん。畳2畳ほどの大きな作品になりました。

海外の書道教室で。手本をもとに思い思いに書いています。

お名前
千葉 清藍(ちば せいらん)さん
出身
東京都葛飾区
座右の銘
Do my best
休日の過ごし方
普段は4歳と2歳の2人の子どものママ。休日は子どもと過ごす時間を大切にしています。

※この記事はaruku2019年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。