患者さんをあらゆる面からトータルでサポート。お薬を渡すだけが薬剤師の仕事ではないと話す八代さんに、薬剤師の役割についてお伺いしました。
もっとフランクに薬剤師を頼ってほしい。買い物やおしゃべりする感覚で来てもらえたら嬉しいです。
薬剤師を志したきっかけを教えてください。
八代 中学・高校生の頃、病院にお世話になって薬局で処方箋を頂いた際に、すごく印象に残る薬剤師の方がいました。どういった症状を良くするために飲むのか、どうしてこの分量で出されているのかなど、きちんと薬を飲む理由まで説明してくれて、母と一緒に感動したことを覚えています。もともと理系志望で自宅が大学に近かったことと、家族の勧めもあり薬剤師を目指すきっかけになりました。
薬剤師になるためにどんなことを勉強したのですか?
八代 今はカリキュラムが変わっているのですが、私が1年生の時は基礎英語や倫理などの一般科目、2~4年生では実験や実習を通して薬学を学びました。5年生になると研究室配属になり、精神科の先生のもとで投薬によってうつ状態のマウスを作る研究をしたのですが、研究を通して症状や行動を観察できたことは、薬剤師になるにあたって自分の為にもなったなと思います。実際の病院や薬局での実習も行い、6年生で研究発表を行いました。国家試験には厳しい合格基準があるのですが無事にクリアし、薬剤師になることが出来ました。
八代さんが薬剤師として薬局に勤務することを選んだのはなぜですか?
八代 接客業務がしたかったので、受付・服薬指導など患者さんと直接お話しができる機会の多い薬局薬剤師を選びました。もともと人と話すのが好きということもありますが、学生の時にフルーツジュースのお店でアルバイトをしたとき、体調に合わせてどんなものを選べばいいか、お客さんから聞かれることがあったんです。薬剤師の仕事に通ずるものを感じたのかもしれませんね。また、薬局では複数の医療機関から処方箋が来るので幅広い診療科を勉強できるところも良いなと思いました。
患者さんに対してどんなことに気をつけていますか?
八代 笑顔で接することはもちろん、患者さんに寄り添った服薬指導を心掛けています。例えば、処方箋通りに飲めない方には理由を聞いて医師と相談したり、粉薬が苦手なお子さんにはシロップに混ぜて飲みやすくしたり、患者さんが服薬しやすいように考えて調剤しています。飲めない理由は人それぞれですし、そういったところを汲み取って医師に伝えることも薬剤師の重要な役割だと思います。また、お薬を渡すだけでなく患者さんにほっとして頂けるような空間作りを心掛けています。折り紙が飾ってあるのは小児科が近いこの店舗の特徴で、スタッフと相談して季節毎に変えているんですよ。
薬局ではお薬を渡すこと以外にどんなことをしていますか?
八代 地域の方の健康相談やお薬の相談を受け、健康維持・増進のお手伝いをしています。処方箋がなくても医薬品を購入したり、健康や美容に気を使ってサプリメントを購入されたりする方もいるので、様々なアドバイスもしているんですよ。また、定期的に健康フェアを行い血圧や肌年齢の測定なども行っています。病院からの処方箋を持って行くのみでなく、買い物やおしゃべりをする感覚で来てもらえると嬉しいです。
これからどんなことに挑戦していきたいですか?
八代 大学時代に研究していたこともあり、精神科の患者さんのサポートをしていきたいです。心の病や不安な部分を取り除くお手伝いができる精神科はさらなるやりがいがあるのではないかと考えています。この春から精神科の医療施設が近くにある店舗にも勤務し、少しずつ勉強も始めています。知識を増やして薬剤師としての幅を広げていきたいですね。
薬剤師を目指す子どもたちへメッセージをお願いします。
八代 算数・数学はできた方が良いと思います。処方箋は1日量×日数で記載されることが多いので、早く正確に計算ができるに越したことはないです。薬剤師に興味があるなら、病院、薬局、ドラッグストアなど、働く場所によって特徴が違うことも知っておくと参考になると思います。職場体験など、薬剤師の仕事を体験する機会もあるので、ぜひいろんなことを経験し見聞を広げてください。
薬の重複や飲み合わせの問題を避けるためにも、かかりつけ薬局やお薬手帳をもつことをお勧めします。かかりつけ薬剤師をもっていただくことで、親近感や安心感を持って相談が出来ると思いますよ。子どもの患者さんの成長が分かったり、変化に気づいたりできると私も嬉しいですし、服薬歴が分かるのでスムーズに対応できます。病気の時だけでなく、健康相談やサプリメントを購入する時など普段から気軽に利用してくださいね。
- 株式会社コスモファーマ コスモ調剤薬局山崎店 薬剤師 八代彩愛(やしろ さより)さん
- 出身地
- 福島県郡山市
- 学歴
- 奥羽大学薬学部
- お休みの日の過ごし方
- アニメ・映画鑑賞
※この記事はaruku2020年5月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。