古くから城下町として栄えた会津若松市には、歴史ある文化財や工芸品などが数多く残っています。取材のたびに、そんな風情ある佇まいにワクワクしてきたarukuが、以前から気になっていたのが和菓子屋さんの多さ!創業何百年を超えるお店の由緒ある逸品から、昔懐かしい素朴な味まで、実に多彩な和菓子に出会うことができました。その中から創業年代順に10店の和菓子をご紹介。この秋は会津の伝統の味をしっとり味わってみませんか?
五郎兵衛飴総本舗(創業800余年)
あの有名人も食べた!?歴史ロマン漂う琥珀色の飴
創業はなんと鎌倉時代!「五郎兵衛飴」は、あの源義経が平泉に落ち延びる途中に立ち寄って食べた飴に由来する、由緒ある飴菓子。もち米と麦芽で作った水飴に寒天を加えて固めただけという、800年前とほぼ変わらない製法で作られています。添加物不使用の自然な甘さは、シンプルながらどこかほっとする味わい。グミとゼリーの中間のような不思議な食感も魅力です。
元祖椿餅 伊勢屋(創業200余年)
絶妙な甘じょっぱさで長年愛される餅菓子
鶴ヶ城を築城した蒲生氏郷が伊勢から会津に来る際に付き従った菓子職人を祖先に持つ伊勢屋。名物の「椿餅」は、小麦粉と餅粉に醤油や砂糖を加えて蒸し上げた、ゆべしに似た食感のお菓子です。モチっとしていながら歯切れ良い生地に、たっぷり入った地元産のくるみがアクセント。土産店でも購入できる真空パックのものに加え、店舗ではより風味良く柔らかな生バージョンも販売。
松本家(創業201年)
甘さ控えめがうれしい東山温泉の定番みやげ
東山温泉街の中ほどに店を構える松本家の「水ようかん」は、さっぱりした甘さと小豆のつぶつぶ感が魅力。もともとは東山温泉に訪れる湯治客にお茶菓子として振舞っていたのが始まりで、あまりのおいしさから「お土産にしたい」という声が相次ぎ本格的に羊羹屋を始めたそう。北海道産小豆、信州産の極上寒天と素材にもこだわり、昔ながらの味を守り続けています。
菓子司 熊野屋(創業133年)
生クリームとあんこの最強コラボにうっとり♡
観光客で賑わう七日町通りに時代劇に登場する峠のお茶屋さんのような佇まいのお店を発見!明治20年(1887年)創業の「菓子司 熊野屋」は、おまんじゅうやお団子などを王道の和菓子を得意としつつ、現代的な感覚を取り入れた和スイーツでも人気のお店。
イチオシの「生どら焼き」は、1枚1枚丁寧に焼き上げるホットケーキのようなしっとりふわふわの生地に、たっぷりの生クリームと風味豊かな粒あんをサンドしたボリューム満点の逸品です。生クリームのほかにも抹茶やキャラメル、会津の特産であるアスパラ入りのあんを使った変わり種まで計7種が並び、思わず全種類制覇したくなるラインナップ。和と洋のコラボは、お茶にもコーヒーにもマッチします。
店内にはイートインスペースがあり、購入したお菓子はその場で食べることも。店頭では土日限定でみたらし団子やしんごろうもち(1本各150円)の実演販売もあるそうなので要チェック!
庄助製菓本舗(創業113年)
ごろっと豆感が楽しい♪土曜限定のこだわりの味
市内のホテルや旅館のお茶菓子にもなっている「宝の山」を製造する庄助製菓本舗では、毎週土曜限定で「豆大福」を販売中。会津産のもち米からうまれる、もちもちと柔らかな大福のアクセントになっているのは、塩味の効いた北海道産の赤えんどう豆。豆の食感を楽しめるよう少し硬めにふかすのがポイントだそう。「翌日には固くなるのでその日のうちに食べて欲しい」と店主の笠原さん。
会津路菓子処 白虎堂(創業112年)
いちじくまるっと1個入り!季節限定のレアな逸品
大ぶりのいちじくの実のコンポートをまるまる1個贅沢に使った白虎堂の「いちじくの揚げまんじゅう」は、いちじくが旬を迎える秋だけの季節限定商品。毎年この時期を楽しみにしているファンも多く、発売と同時に売れてしまうほどの人気だそう。香ばしくサクッと揚げた衣と、ジューシーないちじくの果肉は相性抜群!おみやげにしても喜ばれること間違いなしです。
餡のおおすか(創業108年)
あんこのプロが作るバランスの良い“ぼだもぢ”
“ぼだもぢ”と会津らしい訛りがそのまま商品名になったユニークな一品。一般的なぼたもちと違い、炊いたもち米を“はんごろし”(半分ほど潰した状態)にしているのでお米の粒感とお餅の柔らかさの両方が味わえるのが特徴。それを包み込むあんこもまた、粒とこしのバランスが絶妙で、時間が経ってもしっとりやわらか。創業以来、製餡所としてこだわり続けてきた技が活きています。
※通販あり(http://www.anco.co.jp/?pid=55519029)
吉田菓子舗(創業100余年)
真心込めてひとつずつ季節を味わう上生菓子
吉田菓子舗と言えばレトロな昭和スタイルのパンでおなじみの方もいるかもしれませんが、そもそもはれっきとした和菓子店。会津のおみやげとして親しまれる「巴もなか」や「四道将軍」のほか、おまんじゅうやどら焼きなど、いくつもの和菓子がショーケースを彩っています。
中でも目を引くのが、鮮やかな上生菓子。この道40年以上のベテランの職人さんが、デザインを考えひとつひとつ手作りで仕上げています。上生菓子は季節感を先取りしたモチーフが好まれるそうで、9月上旬の取材時に並んでいたのは「野菊」や「秋ざくら」と名付けられた秋のお菓子。カラフルで繊細な意匠は食べるのがもったいないほどですが、舌ざわりのなめらかさと上品な甘さが心地よく、ついひとつふたつと口に運んでしまいます。その時期にしか作らないものもあるとのことなので、ぜひ一期一会の出会いを楽しみにお店を訪れてみてください。
上田屋(創業101年)
砂糖たっぷり、でも甘すぎない昔ながらの手作りおやつ
「上田屋といえばあんどーなつ」!と言われるくらい、会津では親しまれているロングセラー商品。砂糖をまぶしたしっとり生地の中にはきめ細かいこしあんがたっぷり。でも、意外にもあっさり食べられるのは、余計なものを入れず「昔ながらの素朴な味」をモットーにしているからこそ。店舗でのみ白あんバージョンを販売しているので、食べ比べてみて!
果汁たっぷりのみかんが丸ごと入ったフルーツ大福
上田屋で人気急上昇中なのが、ひとつひとつ手作りしているという「みかん大福」。和歌山産の温州みかんを使ったジューシー&ボリューミーな大福です。もちっとした求肥の中には白あんとみかんが丸ごと1個!みかんの酸味と白あんの爽やかな甘みがマッチしてさっぱりといただけます。勢いよくかぶりつくとみかんの果汁がこぼれてしまうのでご注意を!
ささ姫総本舗 桜島商店(創業40余年)
会津でおなじみの縁起物が笑顔がキュートな餅菓子に!
笹を開くと、ころんと登場する起き上がり小法師。にっこり微笑む姿にこちらも思わず笑顔になってしまいそうな餅菓子ですが、実はひとつひとつ手描きで仕上げているため、すべて表情が違うのです。しっとりと弾力のあるお餅には会津産もち米「こがねもち」を使用。中のあんは口どけが良く上品な甘さで後を引きます。縁起物としてプレゼントしても喜ばれそう♪
※この記事はaruku2020年10月号に掲載したものです。価格(税込)や内容は取材時のものです。