愛くるしい郷土玩具に 新たな息吹を吹き込む。
愛嬌のある顔やゆらゆらと首を揺らす姿に癒される赤べこや、転んでもすぐ起き上がる姿が微笑ましい起き上がり小法師。400年以上に渡って身近に親しまれている福島を代表するお馴染みの郷土玩具です。時代の変化や職人の減少に伴い、年々工房が少なくなっている中、西会津町にある「野沢民芸」では、伝統の民芸品にとどまらない会津張子の魅力を発信し続けています。
「伝統の絵柄とは違う赤べこを作るようになったのは震災がきっかけでした。復興の想いを込めて(平穏な暮らしを願う意味がある)青海波の紋様をあしらった青い赤べこを作ったんです。当初は商品化することは考えていませんでしたが、たくさんの方からこれが欲しいと言ってもらえて。そこからいろんなものが生まれていきましたね」。絵付師の早川さんは会津張子に大きな可能性を感じた契機をこう振り返ります。今ではこれまでになかったカラフルな赤べこからリサ・ラーソンやバーバパパとコラボしたものまで、「野沢民芸」の会津張子は年々進化を遂げています。
親しみやすさの源は伝統に向き合うこと。
会津張子の新しい表現法を積極的に取り入れていく一方で、伝統のモノづくりを大切にする想いも強く持っているという早川さん。
「私たちが作っているのは高価な作品ではなく、誰もが気軽に手に取れる商品。一つひとつ手描きで絵付けをしているのでよく見ると微妙に表情が違いますが、だからといって自己流に絵付けをすればいいものでもありません。線一本の強弱やパーツのバランス、描く順番などを守って商品としての許容範囲で美しく仕上げることが大切です。慣れてくると許容範囲をはみ出してしまい、お客様にも違和感が伝わってしまうので、初心を忘れず丁寧な絵付けを心がけていますね。一日に絵付けできる数は限られますが、購入した方に喜んでもらえるとやっぱり嬉しいです。新しい赤べこや小法師がそこにちょっとした特別感をプラスできたら」。昔ながらの赤べこにも新しいアイデアの小法師にも変わらぬ親しみやすさを覚えるのは、こうしたモノづくりへの真摯な姿勢があるからなのかもしれません。
※この記事はaruku2021年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。