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公開日:
2021.4.1
更新日:
2022.11.28

建築士|プロフェッショナル夢名鑑 

建築士|プロフェッショナル夢名鑑 

かつては男性社会と言われていた建築業界で、女性ならではの視点を活かし活躍する一級建築士にお話を伺いました。

建てて終わりではなく、“人が住んでこそ輝く家づくり”を心掛けています。

「実際に建築予定の現場に足を運び、風通りや光の差し方を体感してから図面を書くようにしています」と渡辺さん

小さい頃から建築関係に興味があったのですか?
渡辺 父が建築士なので小さい頃から興味を持っていました。実家に事務所があり、建築に関する本もたくさんあったので、よく読んでいましたね。しかし、最初は建築士になることを父に反対されていたんです。建築業界の苦労もわかっているし、当時は女性も少なく男性社会でしたから。高校も工業系に進みたかったのですが、卒業してからでも遅くないと両親に説得され、普通科の高校に進学しました。本格的に建築について学び始めたのは工業大学に進学してからですが、その頃には両親も応援してくれていました。

大学ではどんなことを学ばれたのですか?
渡辺 英語や数学といった普通の教科に加えて、材料学(※1)や構造力学(※2)などを学びました。工業高校出身の人達は、そういった基礎的なことを理解した上で学んでいるので、やっぱり工業高校に進めばよかったかな、なんて思うこともありましたね。でも、わからないことは周りに教えてもらえばいいし、やりたいことを夢中で学んでいただけなので、苦に感じることはなかったです。建築といっても住宅から街づくりまで分野が分かれており、基本となる作図をはじめ、デザインなど様々な授業がありましたね。大学で学んだ後は試験を受け、二級建築士の資格を取得しました。
(※1)建築物に使用する素材(木材や壁材など)
(※2)構造物が荷重を受けた時に生じる応力や変形などを解析するための力学

大学卒業後はどんな分野の建築に携わっていたのですか?
渡辺 消防庁舎や役所など、公共施設の建築に携わる会社で働いていました。公共施設は住宅と違いコンペやプロポーザル(企画提案競技)があり、一つの建物のプランを他社と競い合うのはとても良い刺激になりました。普段の生活の中であまり意識することはないと思いますが、建物の形や色には一つ一つ意味があり、ものすごく考えて作られています。人が出入りしやすい動線だったり、山並みの稜線を取り入れたり、その土地に合う機能性と見た目は建築においても大事です。当時消防庁舎のプランがコンペで採用された時は、とても嬉しかったし、すごく感動したことを覚えています。

今は住宅をメインに扱う無添加あいの家で働かれているんですよね。
渡辺 2年間の実務経験を経て一級建築士の資格を取得できたことと、結婚を機に働くフィールドを変えました。ちょうど今の“カラダにいい素材”で家を作る話もありましたし、私自身子どもができたことも決断の大きな理由です。初めこそ育児の合間を縫って設計プランを立てたり、素材について調べたりしていたのですが、人と話すことが好きな私にとって、家に籠っているのは向いていないなと思って(笑)。今では内覧会の案内やお客様との打ち合わせ、建築現場での大工さんとの確認作業など、外に出て様々な人と関わりながら仕事ができているので楽しいです。

住宅と公共施設、建築分野の違いによって仕事の魅力は異なりますか?
渡辺 エンドユーザー(※3)の声が直接聞けるというのは、住宅ならではの魅力だなと感じています。公共施設は多くの人に利用してもらえますが、作る際の打ち合わせは主に役所の方なので、実際に利用する人たちの声や反応を体感することは少ないです。その点、住宅はその家に住む人と顔を合わせて、照明器具やコンセントの位置など、意見を聞きながら一緒に作り上げていける。喜んで下さる顔が直接見えるのはとても嬉しいです。家は人が住んでこそ輝く建物。楽しんで暮らしている様子の写真を送っていただくこともあり、やりがいにもつながっています。
(※3)最終的に使う人を意味する言葉

家づくりを行う際、特に気を付けているポイントはありますか?
渡辺 施主様の話に耳を傾けるのは大前提ですが、やりたいことと困っていることは必ず聞くようにしています。お金と時間をかけて作る夢のマイホームを、予算や面積の都合で諦めてほしくないからです。また、小さいお子さんがいる家庭には、リビング収納の提案をしています。性別によっておもちゃの大きさや数も違いますが、子どもは必ず散らかします(笑)。家族が多く集まる場所だから、快適に過ごせる空間づくりは欠かせません。女性や母親ならではの視点は、家づくりにおいてもとても重要だと思っています。

建築士として働く中で最近嬉しかったことはなんですか?
渡辺 3年前にファーストプランを提案したお客様がいたのですが、そのあと音沙汰がなく、私達も他の会社で家を建てることに決めたのかなと思っていたんです。でもつい最近、「いろいろな建築会社を周りましたが、やっぱり渡辺さんが作ったプランが1番良かった」と、戻ってきてくれた方がいたのはとても嬉しかったです。実際に施工する時も、最初のプランに水回りを1か所増やす程度で、お客様の希望に寄り添った提案ができていたんだなと実感できました。

建築士を目指すお子さんへメッセージをお願いします。
渡辺 旅をしていろんなものに触れ合って下さい。今は難しい状況かもしれませんが、近くの道の駅でもいいですし、多種多様な建物を見ることで、何でできているのか、どうしてそのデザインなのか、さまざまなヒントが得られると思います。商業施設や街づくりなど、建築の分野にもいろいろありますし、そこから自分が進みたい方向が決まっていくと思いますよ。

渡辺さんが描いた図面とパース。一つの住宅をつくるにも、多い時で100近くプランを書くこともあるそう。

お名前
一級建築士 渡辺(わたなべ)さん
座右の銘
急がば回れ
休日の過ごし方
家族とテニス

※この記事はaruku2021年4月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。