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公開日:
2022.6.29
更新日:
2022.11.28

林業従事者|プロフェッショナル夢名鑑 

林業従事者|プロフェッショナル夢名鑑 

木を育て、森を作り、木材を生産する。今回は林業の魅力に魅せられた林業従事者にお話を伺いました。

林業は自然を守り、未来へ繋げる仕事なんです

「子どもたちが物心がついた時に、「田村市の自然って良いよね」と感じてもらえたらいいなと思っています」と桑原さん。


桑原さんが林業の世界に入ったきっかけはなんですか?
桑原 実家が電気店を営んでいたこともあり、専門学校卒業後は建築の現場で働いたのですが、大工や内装などさまざまな職業の方と働くうちに、ミリ単位で決められたものをルールに則って進める仕事に窮屈さを感じたんですね。そこで、計算できない自然を相手にする一次産業なら、もっと自由に自分の考え方ややり方で仕事を具現化できると思いました。生まれ育った田村市は森林が多いのに、それまで無関心だったことや森林を活かせる仕事に林業があると知り、この世界に飛び込んでみることにしたのです。

思い切った決断ですが、林業についてどうやって学ばれたのですか?
桑原 まず田村市の森林組合に入り、師匠に弟子入りする形で学びながら経験を積みました。林業は農業と同じように、建材などに使う木を育てて収穫し販売するのが一般的で、植林から伐木までを約50~60年のサイクルで行います。また、木材として一本の価値を上げていくために、充分な栄養が行き渡るように下刈りと言われる除草作業や、まっすぐ幹が伸びるように余分な枝を落とす枝打ちという作業を行います。初めて行った植林の現場は今でも衝撃的でしたね。

どのように衝撃的だったのですか?
桑原 植林のために地ごしらえ(※)という作業をするのですが、親方がその辺に落ちている太い枝を使って落ち葉や小枝をどかし始めたんです。それを見て、決まった道具は使わないんだ!?こんなやり方もあるんだ!って、それまでの仕事とは真逆のことだったので、もう衝撃的で(笑)。今はそういった作業は機械を使いますが、自然の中で作業する林業の仕事ってすごく自由で面白いなって魅せられた瞬間でした。

※地ごしらえ…植林がしやすいように、葉っぱや木の枝をどけて整地すること。

林業はよく3K(キツイ・汚れる・危険)と言われますが、実際はどうですか?
桑原 風を読んで木を倒す方向を決めたり、天候を読んで作業行程を組んだり、現場の環境に応じてリスク管理を行えば危険な目に合うこともほとんどありません。今は昔に比べて機械の軽量化や性能も向上しているので、女性で活躍している方もいます。林業といっても山の中で行う作業から、住宅地で行う作業まであり、それぞれの現場で木の切り方や使う道具も変わってきますし、様々なスタイルがあるんですよ。

林業の世界に入る前後で仕事に対する印象は何か変わりましたか?
桑原 林業は木を切るために育てる側面もあるけど、50~60年後を見据えて行うということは、山の自然をつくり環境を守る仕事でもあります。同時にそれは、子々孫々へ繋ぐ素晴らしい仕事だと感じました。普段忘れがちですが、私たちは森林や山を通して作られる空気や水を受け取って生きています。そんな恵みを生み出す自然に携わる仕事ってシンプルにかっこいいし、価値もあるじゃないですか。だから、環境を綺麗にするとか、かっこいいとか、そういったマインドから広がって林業に携わる人が増えていけば、世の中のイメージも変わっていくと思います。

現在は独立されていますが、具体的にどんなことをしているのですか?
桑原 田村市を中心に、個人が所有する山や森林で起こる困りごとを解決しています。田村市には約3万haの森林があり、その2/3が実は個人所有の物です。中山間地域である田村市では、家の裏が山の所が多く、木が電線や屋根まで生い茂ることがよくあります。木を切ってしまえばとりあえずの解決になりますが、木を切る=正しい方法ではないこともあります。土砂崩れ防止のために植えられたものなら、低木にしたり、草を植えたりすれば課題をクリアできることもあります。木を切るという一時的な解決方法ではなく、孫の代まで考えた木と共生できる提案をしていきたいです。

今後、林業を通してどのようなことをしていきたいですか?
桑原 私は自由と楽しさを与えてもらっている林業の仕事が大好きですし、多くの人に知ってもらうことで林業界を活性化し、山に恩返しをしていきたいと思っています。そのためにはみんなに「関心」をまず持ってもらうことです。本来、森林や木はずっと身近なものですが、街中に住んでいると遠い存在に思えてしまいます。家や道路などに生えて生活の邪魔になったり、自然災害などが起きた時など、木を悪者にしてしまいませんか?木や森はきちんと手入れすれば防災の役割もありますし、私たちも安全に生活を営むことができます。私もワークショップなどで林業の仕事を教えることもありますが、皆さんも何でもいいので木や山に対して関心を持ってもらいたいですね。木の家っていいよね、山の水って美味しいよね、など小さな関心が未来に繋がっていくのですから。

林業に触れるワークショップ“丸太切り体験”での様子。


時にはツリークライミングのように木に登り、空中で作業することも!


お名前
桑原(くわはら)さん
休日の過ごし方
子どもと一緒に遊ぶ・昼寝
座右の銘
とにかく楽しく自由に

※この記事はaruku2022年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。