お客様が求める美容の望みを叶え、癒しを与える。エステティシャンにお話を伺いました。
どれだけ深くお客様の体を知り、ニーズを読み取って施術するかが腕の見せ所です
小さい頃から美容に興味があったのですか?
森合 エステティシャンとして就職するまで、まったくありませんでした。とりあえず短大に進学しても、やりたいと思える仕事は見つからず…。そんな時に母が「私が通っているエステで働いてみたら?」と提案してくれたんです。最初は意欲もなく入社したのですが、もともと医療分野には興味があったので、エステで人体のことを勉強するのが楽しくて。実際に施術できるようになった時、お客様から「気持ち良かったよ」と感謝されたことに爆発的な喜びを感じて「これは天職だ!」と一気にエンジンが入りましたね。
エステの技術はどのように習得していったのでしょうか。
森合 現在、エステティシャンになるには、専門学校やスクールで知識や技術を身につけた後、エステサロンで働き始めるという流れが一般的です。しかし、当時は経験や知識がなくても実務を通して仕事を覚えていく流れでした。まずはボディ、その後にフェイシャル(顔の肌のケア)、脱毛と、先輩にモデルになってもらい、理論と技術を教わりながら練習を繰り返す毎日。お客様に喜んでもらうためと思うと勉強も練習も楽しくて、習得まで2年かかるといわれる技術を3ヵ月で覚えてしまうほど夢中でした。
技術を身につける中でどんなご苦労がありましたか?
森合 新人の頃、あるお客様に初めて施術をした時に、力加減がわからなくて「何をされているのかちっともわからない」とお?りを受けたことがあったんです。新人にとって初回の施術でお客様のニーズを読み取ることは難しいことなのですが、悔しくて悔しくて。「この人に私じゃないとダメって言わせたい」という一心で、そのお客様を担当している他のエステティシャンに話を聞いたり、力加減が合っているかどうか声掛けをしたりと、お客様が求める施術を求め続けました。それから30年経ちましたが、今もそのお客様は私が立ち上げたサロンに通ってくださっています。本当に多くのお客様に育てていただきましたね。
仕事のやりがいはどんなところにありますか。
森合 お客様に「ありがとう」と言っていただき、笑顔で帰っていく姿を見送る時です。その時感じる喜びがやみつきになっているのかもしれません。私がサロンで行っている施術は、手技と必要に応じて機械を組み合わせた施術。筋肉の付き方や血液の流れ方、細胞のつながり方は人によって異なるため、どれだけ深くお客様の体を知り、施術するかが腕の見せ所です。長く通ってくださっているお客様は、体に触れた時の張り感でどんな施術にすべきかを感じ取れますし、お店に入ってきてぱっと見た雰囲気で声の大きさやスピードを調整することもあります。お客様の所作からどんなことを考えているのかを読み取って、良い施術に結び付けることは、愛情そのものだと思います。
サロン内は癒しの雰囲気が漂っていて、安心感があります。
森合 サロンにいらっしゃるお客様はもちろん、「痩せたい」「綺麗になりたい」という思いで来てくれていると思うのですが、心の奥では自分の居場所を探していると思うんです。そこにスッと寄り添える、保健室のような場所でありたい。美容に関しても上から目線でアドバイスするのではなく、お客様の背中を押すような存在でいたいと考えています。
サロンではさまざまなメニューをご用意されていますよね。
森合 美容に効果があるエステのメニューは絶え間なく新しい技術や商品が出てくるので、常に勉強しています。新しい商品を取り入れたり、技術を習得したりしようと考える時には、費用対効果よりもまず「この商品はあの方に合いそう」「この施術ができればあの方はもっと良くなるかも」と、特定のお客様のお顔が浮かびます。それが他のお客様にもマッチして、より幅広い施術をご提供できるようになっていると感じます。
現在は専門学校の講師としてもご活躍されているそうですね。
森合 エステティシャンになるには民間団体の資格が求められます。私は専門分野であるボディとフェイシャルの資格を取得するための技術を国際ビューティ&フード大学校で教えています。美容を学ぶ専門学校はエステと並行してメイクやネイルを学ぶカリキュラムが用意されていることが多く、勉強は大変そうですが、人生の幅が広がりますよね。知識と技術がある人は数えきれないほどいますが、お客様に選ばれるエステティシャンになるには人間力が大事。学生には、技術以前に人を喜ばせたいという思いや気持ちを持ち続けてほしいと伝えています。
今後の目標について教えてください。
森合 来年2023年でエステティシャンになって30年になります。その集大成として、より技術を高めたいと考えている次世代の美容関係者に、エステの技術や知識を教えるアカデミーを開きたいと思っています。
子どもたちへメッセージをお願いします。
森合 小学生~高校生の期間って、自分の好きなこと、楽しいことを見つける旅なんだと思うんです。スマホの画面ではなく本物を見て、直接何かを感じることで自分の「好き」を見つけ、大切にしてください。仕事を選ぶときは、「お金のため」「親のため」ということに縛られちゃダメ。自分が心から楽しいと思えることを続けられるって、本当に幸せなことですよ。
- 森合(もりあい)さん
- 好きな言葉
- 思考は現実化する
- 休日の過ごし方
- パワースポット巡り
※この記事はaruku2022年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。