新天地から届けるふるさとの味と明るい笑顔
一般的な焼きそばの3倍以上の太さを誇る麺にたっぷりのもやしと豚肉、これを甘辛ソースで絡めて豪快にいただくなみえ焼そば。今や全国区の知名度を誇る大人気のご当地グルメです。今から約50年前に簡単に作れておなか一杯満足できるようにと考案され、以来地域の人たちに欠かせない存在としてお店や家庭で親しまれてきました。
そんななみえ焼そばですが、震災、原発事故を理由に避難生活を余儀なくされ、現在食べることができるお店は県内に数えるほどしかありません。その中で2011年の7月にいち早く再開を果たしたのが二本松市にある『杉乃家』。店主の芦沢さんは当時を振り返り、「孫たちは4月には新しい学校に通い始めた。自分も前に進まないといけないと思ったんだ」と、家族の前で頑張る姿を見せたいという気持ちが原動力になったことを教えてくれました。もうひとつ後押しとなったのが、同じ浪江町から避難してきた人からのお店の再開を望む声でした。今では、地域の人の交流の場として。ふるさとの味に触れられる場として。連日大勢のお客さんでお店はにぎわっています。そして『杉乃家』を取材して印象的だったのが店員さんたちの笑顔あふれる接客。なみえ焼そばを食べ進めると大堀相馬焼の器に描かれた9頭の馬の絵が出てきます。これには何事も“馬九行九(うまくいく)”のメッセージが込められているのだそう。おいしく食べて元気まで分けてもらえる、そんな温かな時間が過ごせるのも大きな魅力だと感じました。
なみえ焼そば 650円 ※ごはん付き 850円
麺/まるでうどんを思わせるこの極太の中華麺こそ、なみえ焼そばの代名詞。もちもちのコシとツルンとした食感は一度食べれば虜になるおいしさ。
味/抜群の存在感の麺に負けないよう、ソースの味にもパンチを効かせて。少し濃い目の甘辛ソースが全体に絡んで見事な一体感を演出。
具/なみえ焼そばの具材はシンプルに豚バラ肉ともやしのみ。もやしのシャキシャキ感は絶妙なアクセント。豚肉もたっぷりで食べ応えも抜群!
相棒/杉乃屋では、白飯と七味にんにくが名脇役。ソースの濃い味わいがご飯にベストマッチ。中盤以降は七味にんにくで味の変化を楽しむべし!
浪江と二本松、2つの町へのメッセージが書かれた大きな横断幕が印象的な店内。
※この記事は2014年10月号に掲載したものです。内容や金額等は取材当時(2014年9月)のものです。