花はプレゼントの中で、特に贈る人の気持ちが込められるもの。だからこそ、喜ばれるアレンジを作りたい。
花を仕事にしようと思ったきっかけを教えてください。
山川 私は花屋の2代目として生まれ、親もフラワーデザインをやっていましたが、子どものころはあまり興味がありませんでした。大学に進み、海外で働くことも考えていましたが、花屋でアルバイトをしたことがきっかけで花の道に進みました。アルバイトではホテルのロビーやウェディングの装飾を手伝っていたのですが、単にお花を飾るのではなく、空間に合わせた装飾を見て「こんな風にアレンジできるんだ」と、花の魅力に気づかされたんです。この経験が、フラワーデザイナーを目指すきっかけとなりました。
どのようにセンスや技術を磨いていったのですか?
山川 最初はアルバイトで、卒業後は地元に戻り花屋の仕事をしながら月一回神奈川の学校に通い技術を学びました。華道と異なり、フラワーデザインは空間に合わせた装飾的な意味合いが強く、花の見せ方、色の合わせ方、様々なサイズの作り方など習うことは様々あります。また、マイスター制度のあるドイツで、美しいデザインを作るための理論を学べたことも自分にとって大きな成長になりました。
日本ではプレゼントすることが多い花ですが、ヨーロッパでは食卓や部屋など日常生活に花があり、日本とは違った花の価値観を持っています。ですが、学んだ理論の中にも日本の侘び寂び文化から影響を受けた部分が見られて、とても面白いなあと思いましたね。
フラワーデザインをする際、山川さんが常に意識していることは何ですか?
山川 その時々のトレンドは常に把握するようにしています。ナチュラルなもの、カラーを統一したもの、褐色系で秋らしくしたものなどなど…。今はSNSで情報収集もできますが、テレビに映る装飾やお店の装飾、流行のファッションからも参考にすることが多いですね。トレンドだけではなく「和の空間に合うように」「中世ヨーロッパのロココ調のように」、など歴史や文化に添ったデザインを求められることもありますので、日頃から美術館や景色など、インスピレーションを得られそうなものには触れるようにしています。
花はプレゼントに選ばれることが多いですが、どんなことを心がけていますか?
山川 オーダーが入ったときは、お祝いやお見舞いなど贈るシーンや、贈る相手の好みや雰囲気、性別や年代、満開の状態で贈るのか長く飾って楽しみたいのか、様々な点から考慮し、作り上げています。花はプレゼントの中でも、特に気持ちを込めて贈られるものですから、心がけているのは贈る方も贈られる方も喜ばれるようなアレンジ。そのため、花も常に良い状態で、そして日持ちするよう温度や水替えをしっかり管理しています。
思い出深いエピソードはありますか?
山川 あるとき、男性の方がプロポーズをするためバラの花束を買いに来たことがあり、これは最高の花束を作らねばと、同じ男性として気合が入りました。嬉しかったのはそのあと。その男性が「成功しました!」と報告に来てくれ、さらに数日後に相手の女性と一緒に花を買いに来てくださったんです。その方の人生一大イベントをサポートできて、良かったなあと思いました。
フラワーデザインの日本一を決める今年の「日本花職杯」では見事優勝しましたね。
山川 はい、14回目の挑戦だったので本当に嬉しかったですね。ファイナルではロビーディスプレイをテーマに、花やクラフト紙などの異素材を組み合わせた作品を作ったのですが、当日までテーマもどんな素材が来るのかわからないんです。アレンジ開始の15分前に初めて伝えられ、2時間で完成させなければならない、なかなかハードな大会です。今までの経験やセンスを最大限に引き出して勝ち取れたものなので、自分自身に箔を付けることができました。
山川さんにとって、花の魅力とはどんなところですか?
山川 花は、見ているだけで気持ちが明るくなったり、癒されたり、時には悲しみに寄り添ったり、人に与える力がとても大きいものだと思います。ドライフラワーや造花も良いですが、生花を一本飾るだけでもお部屋の雰囲気が変わると思います。コロナ禍をきっかけに花を楽しむ家庭も増えました。花屋では花束で買わないといけないと思われがちですが、一本だけの購入も大歓迎です。その時の気分で選んでみたり、違う種類を選んでみたり。そこからどんどん花を好きになってもらえたら、花屋としてとても嬉しいですね。
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2023年の花職杯でグランプリに選ばれた山川さんの作品。ネオンカラーのクラフト資材を使い、アンバランスさが斬新な作品で見事受賞しました。
- お名前
- 山川(やまかわ)さん
- 出身
- 郡山市
- 最終学歴
- 東海大学 教養学部 国際学科
- 休日の過ごし方
- ラーメンを食べに行ったり、日帰り温泉に行ったり、時間に追われない過ごし方をしているそう。
※この記事はaruku2023年11月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。