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公開日:
2024.1.9
更新日:
2024.1.9

日本酒研究者|プロフェッショナル夢名鑑

日本酒研究者|プロフェッショナル夢名鑑

「酒どころ福島」の立役者となった、日本酒の研究家にお話を聞きました。

福島の日本酒はおいしいと言ってもらえることが一番のやりがい

福島県の日本酒の発展んい貢献したことから「日本酒の神様」と呼ばれている鈴木さん。

これまでどのように日本酒の研究をしてきたのか教えてください
鈴木 福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターで30年以上、日本酒の研究をしてきました。センターでは、食品を製造する企業が、より良い商品を開発できるように技術支援をしています。日本酒の出来栄えは「全国新酒鑑評会(以下、鑑評会)」で評価されます。私はそこで最高ランクの金賞を取れる日本酒はどんなものなのかを研究し、酒蔵に伝えてきました。

福島県は全国有数の酒どころとして有名ですよね。
鈴木 私が1993年に日本酒担当として研究を始めた当初は、そうではありませんでした。鑑評会で金賞を獲得できない年もあり、日本酒と言えば新潟県といわれていたのです。2013年から鑑評会で金賞を受賞した日本酒の数が9年連続で日本一になり、「福島県=日本酒王国」が定着していったといえます。

どうしてそんなに金賞を取れるようになったのでしょうか。
鈴木 新潟県の醸造試験場の方が金賞を取るためのマニュアルを作っているという話を聞きました。私はそれまでの研究と新潟のマニュアルを融合させ、2022年に独自の「福島流吟醸酒製造マニュアル」を作成。翌年には13点が金賞を受賞しました。その後も段階的に受賞数が伸び、2006年には23点が金賞入り。初めて受賞数が日本一になりました。それ以降2022年まで、金賞受賞数が2位以下に落ちたことはありません。
また、若手の造り手育成のために福島県酒造組合が1992年から開講している「清酒アカデミー」の活動が実を結び、酒蔵同士が切磋琢磨し合える環境が定着してきたことも大きな要因でした。

2022年に福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターを定年退職されましたが、現在はどのようなお仕事をされているのですか?
鈴木 福島県酒造組合で、主に酒蔵から酒造りに関しての相談を受けています。2023年は夏の暑さで原料の米が硬くなってしまい酒造りにも影響が出ているため、仕込みのアドバイスもしています。講演会などに呼ばれて日本酒の魅力を伝える活動も行っています。

福島の日本酒の魅力を教えてください。
鈴木 適度に香りがあって、それでいて軽快で、いつまでも飲み続けられて、ちょっと甘めで柔らかい、女性に非常に好まれやすい味わいが、福島の日本酒の特徴です。日本酒は、醸造の過程が味にでます。頑張っている蔵は本当に味がクリアなんです。
酒蔵同士が良い酒を造るために、情報交換して高め合っているのも福島の酒文化の魅力です。福島のお酒はこれからもどんどん美味しくなっていくはずです。

鈴木さんの日本酒との出会いはどんなものだったのですか?
鈴木 大学は得意・不得意科目の関係で農学部を選び、食品加工の勉強をしていました。「農学生は日本のお米の消費拡大に貢献するために日本酒を飲むべき」と教えられ、寮での飲み会と言えば日本酒でした。世の中は酎ハイブームでしたが、私は日本酒の味が気に入っていたし、苦手な食べ物―例えば、以前は生臭く感じていた塩辛も日本酒と合わせるとおいしく食べられるので日本酒が好きだったんです。
就農先は、大学で学んだ食品研究を活かせるところと、あまり考えずに決めました。はじめの配属先では、お土産用の喜多方ラーメンの日持ちを良くするための研究などを担当していました。美味しい酒と美味しくない酒の違いに興味があったので、日本酒の研究部門への異動はうれしかったです。

日本酒の研究で大切なことはどんなことですか?
鈴木 知識と味覚を磨くことです。日本酒は、造り方がわかるまで3年、利き酒で良し悪しがわかるのに5年、ひと口飲んでどんな造りをしたか想像できるようになるまでおおよそ10年かかります。お酒の美味しい・美味しくないは誰にでもわかりますが、研究者や造り手は、味をみて、どんな酵母を使っているか、どのぐらいの温度で貯蔵されていたのか、自分ならどう造るか、というところまで設計図を描けるようにならないといけません。

研究のやりがいはどんなことですか?
鈴木 研究というものは一歩ずつしか進まないので、地道な努力が苦にならない人に向いている仕事だと思います。そんな中、できあがったお酒が美味しいこと、「福島の日本酒はおいしい」と感動してもらえることが一番のやりがいです。

食品関係の研究職に興味がある子どもたちにメッセージをお願いします
鈴木 理科の実験や本をヒントに、自分のわからないことが理解できるようになると面白いですよ。美味しいものを食べた時になぜ美味しいのかを解明していく、その楽しさをぜひ味わってもらいたいです。

鈴木さんが作る「福島流吟醸酒製造マニュアル」は、金賞を受賞できる酒造りのポイントがA4の2ページにまとめられており、毎年更新されています。

お名前
鈴木(すずき)さん
出身
三春町
最終学歴
岩手大学農学部農芸化学科
休日の過ごし方
テニス、お酒を飲む、犬の散歩

※この記事はaruku2024年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。