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公開日:
2024.7.1
更新日:
2024.8.23

高校教員|プロフェッショナル夢名鑑

高校教員|プロフェッショナル夢名鑑

全国大会で優勝経験のある、帝京安積高校和太鼓部の顧問の先生にお話を聞きました。

和太鼓部の一員として、生徒たちと夢を追う今が一番楽しい

太鼓を指導する鈴木さん。生徒からは「細かいことにも気づいて、前に進むためのアドバイスをくれる」と慕われています。

教員を目指した理由を教えてください。
鈴木 幼い頃から「先生」になることが夢でした。でも、具体的にどの学校の先生になりたいのか、高校3年の秋までは、はっきりとしていませんでした。
自分の行きたい道が見えてきたのは、当時所属していた和太鼓部の引退が間近になった時期。帝京安積高校の和太鼓部として、演奏を磨き続けられないことにさみしさを感じたのです。
私の高校には、卒業してから教員として母校に戻り、自分が所属していた部活を指導している先生が多くいます。それを知っていたので、私も和太鼓部の顧問になれば、卒業しても大好きな和太鼓部に携われると考えました。

高校時代の和太鼓部の思い出を聞かせてください。
鈴木 入学してすぐの新入生歓迎会で、演奏に一目ぼれ。楽しそうな先輩たちの姿に憧れて、入部を決めました。とにかく和太鼓が好き、かっこいい演奏がしたい、という気持ちで夢中で練習しましたね。1年生の時に部として初めて全国大会に出場し、学年で唯一メンバーに選ばれました。しかし、2年生から特進クラスになると、ほかの部員より1時間ほど授業時間が長くなり、土曜日も半日が補講に。わずかな部活の隙間時間も、練習していました。
当時も目標は日本一と言っていましたが、それ以上に部活のメンバーで高め合いながら演奏をつくることが楽しくて。和太鼓が好きという気持ちが変わらないまま3年間を過ごしました。

2021年に国語の教師として働き始め、和太鼓部の指導も始まりました。はじめの頃はどうでしたか?
鈴木 指導者として戻ったら、高校時代にかなわなかった日本一になりたいという思いが強くありました。当時のチームは、太鼓をたたく技術そのものは高かった。でも、気持ちの部分は磨く必要がありました。チームで演奏する和太鼓の音には、観客席の後ろのほうにまで届く、心臓に響くような「圧」があります。より圧のある音を出すためには、ただ強く太鼓を打つのではなく、全員が同じタイミングで同じ大きさの音を出さなければなりません。曲にかける思いや、太鼓への熱量、大会の目標といった、向かおうとしている熱量が一致すると、自然と音もそろっていきます。
そうしたチームの思いを一つにするための指導が見えなくて、悩んでばかりでしたね。生徒と話し合って、試行錯誤しながら演奏をつくっていました。

指導をする時にはどんなことに気を付けていますか?
鈴木 私の考え方と生徒の考え方が違うこともあります。意見を押し付けるのではなく、生徒の意見を尊重したい。だからこそ、生徒には自分の考えをしっかり持ってほしいのです。私が思いつかないような意見が出てくるのも、面白いですよね。部活は生徒主体が理想で、私の役割は、客観的な立場として生徒を支えることや、生徒一人ひとりの「やりたい」「成長したい」という意欲を引き出すこと。そうして生徒たちと夢を追っている今が、一番楽しいです。

2022年の『太鼓祭 七人制和太鼓選手権大会』では、女子が創部初の優勝を納めました。目標をかなえた瞬間は、どんな気持ちでしたか?
鈴木 和太鼓には、代表的な全国大会が3つあります。『七人制』は1年で最初の全国大会。実は、本番の演奏を聞きながら反省点をメモしていたぐらい、演奏に納得がいっていなかったんです。次の『全国高校生太鼓甲子園』でも優勝しましたが、まだ演奏を磨く余地はあった。一般チームも出場する『太鼓祭 日本一決定戦』で勝てば真の日本一といえますが、その年の優勝は逃してしまいました。
日本一の演奏ができたと実感できたのは、2023年の『日本一決定戦』で初優勝した時でした。今まで帝京安積高校の太鼓を聴いてきた中で、一番良い演奏でした。生徒たちの努力が実ったこと、これまで一緒にやってきたことが間違いじゃなかったと感じられたことがうれしかったです。

これからの目標を教えてください。
鈴木 『日本一決定戦』は、前年度優勝したチームは出場できません。ですので、7月28日の『第13回全国高校生太鼓甲子園』が、今の3年生にとって最後の全国大会です。昨年の全日本でメンバーに選ばれなかった3年生も含めて、全員で日本一になりたいです。

夢をかなえるためのヒントを聞かせてください。
鈴木 夢や目標をかなえるまでの過程って、今やっていることが正しいのか、そうでないか、悩むことばかりです。でも、その道にやりがいを感じて、楽しみ続けることがすごく大事。一日一日を積み重ねていくことが、夢への一番の近道だと思います。

入部する生徒は、ほとんどが初心者。先輩から後輩へ技術を教えつないでいくのが和太鼓部の伝統です。

高校時代の顧問である坂本先生と肩を並べて指導しています。「鈴木先生がいなければ日本一になれなかった」と坂本先生。

プロフィール

 

【お名前】
鈴木さん
【出身地】
郡山市
【お休みの日の過ごし方】
祖母に会いに行く
【好きな言葉】
積み重ねる

※この記事はaruku2024年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。