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公開日:
2024.8.1
更新日:
2024.8.23

国際弁護士<前編>|プロフェッショナル夢名鑑

国際弁護士<前編>|プロフェッショナル夢名鑑

弁護士は法を用いて社会正義を実現できる仕事

国際弁護士として活躍する根本さん。現在は出身地である郡山市を拠点に活動しています。

国際弁護士とはどんな仕事ですか?
根本 弁護士は国ごとに認められる資格なので、「国際弁護士」という正式な資格はありません。外国語で国際的な案件を扱う弁護士や、外国の弁護士資格を持っている弁護士、さらには私のように「国際法」を専門とする弁護士が、自分を国際弁護士と位置付けています。

弁護士になろうと思った理由を教えてください。
根本 私の父は衆議院議員です。選挙で落選すれば父が職を失ってしまうという不安を常に抱えていた中で、自分は腕一本で仕事ができて、誰にも左右されない人生を歩みたいと思ったんです。
また、弁護士は、法律という社会のルールに基づいて不当な行いを正し、弱い立場にある人を守り、社会において正義を実現することができる仕事です。力の強い人の思いどおりになる世の中ではなく、公正なルールに則って秩序ができていくような世の中を作りたい。そう考えた私は、弁護士になることを決めました。

国際弁護士として、国際的に働こうと思ったのはどうしてですか?
根本 小さいころ、母が郡山の中央図書館でさまざまな本を選び、読む機会を与えてくれました。それでいろいろな国があることを知り、もっと広い世界を見たくなったのが一歩目でした。一方で、日本人は世界で勝負できない、といわれていることも知り、それならまずは自分が世界で勝負できるようになりたいとの思いを持つようにもなりました。国際社会で日本人が存在感を発揮しなければいけないということは今でも強く思っています。

子ども時代の影響が大きかったようですが、どのような幼少期を過ごしたのですか
根本 好きなことをのびのびとさせてもらいました。ザベリオ小学校時代はクラスをまとめて様々なイベントを企画させてもらいました。ボーイスカウトなどでキャンプに行ったのも良い思い出です。
また私は、第二次世界大戦を軍人として戦った祖父から、戦争の悲惨さについて聞かされながら育ちました。この国は二度と同じ悲劇を繰り返してはいけない。祖父の教えは今でも胸に刻まれています。

弁護士資格を取得した後は、どんなお仕事に携わっていたのですか?
根本 私は、弁護士の中では珍しく、貿易(物やサービスの輸出入)に関する国際法(国際ルール)が専門分野です。海外に物やサービスを輸出したい企業などの依頼を受けて、貿易の障壁となる外国の政策への対応をアドバイスしていました。

具体的には、どのようなお仕事なのでしょうか?
根本 第二次世界大戦後、各国が自分に都合の良いように貿易を制限したことが大戦につながったという反省から、世界貿易機関(WTO)という国際機関のもとで貿易に関する国際ルールが作られました。この国際ルールは、自由な貿易が世界全体を豊かにするという信念のもとで、各国が正当な理由なく物やサービスの輸出入を制限することを禁止しています。
身近な例でいえば、福島県の農産物・海産物は、原発事故を理由として、いくつかの国から輸入を制限されてきました。しかし、このなかには、科学的な根拠なく制限をかけているケースもあると考えています。この場合にその撤廃を求める方法として、国同士が外交的に話し合う方法のほかに、他国の輸入制限が国際ルールに反しているとして、国際法廷の役割があるWTOに訴える方法があります。私は、こうした事例があったときに、他国の政策が国際ルールに反していないかについての分析や、WTOに訴えるとしたらどのように議論を組み立てるべきかという戦略を、政府や企業に提供していました。

その後、世界最高峰といわれるアメリカ・ハーバード大学の法科大学院に留学した理由を教えてください。
根本 5年間日本で力を蓄えたので、そろそろ夢だった世界に出ていき、世界で最もレベルが高い場所で自分を磨きたいと思いました。私の専門分野で世界の若手エースといわれる教授に指導してもらえるのも大きな魅力でした。

留学先ではどのようなことを学びましたか。
根本 法律のこと以上に、世界で勝負するうえで、必要な力を学びました。国際社会で尊敬される人というのは、日本語では「包摂的」、英語でいうと「インクルーシブ(inclusive)」な人なんです。国際社会はさまざまな外見、言語、宗教、文化や価値観を持つ人々の集合体で、60カ国から学生が集まる留学先はその縮図のようでした。そんな日本人がマイノリティ(少数者)である環境の中で生き抜き、一目置かれるためには、異なる文化や価値観を持つ人を遠ざけてしまうのではなく、その人に興味を持ち、違いがあることを受け入れて尊重し、仲良くしたり助け合ったりするというインクルーシブな心が必要です。
圧倒的に頭が良いだけではなく、さまざまな国の人と分け隔てなく付き合い、困っている友達がいれば手を差し伸べる。そんな「世界レベル」の尊敬すべき友人に出会い、自分の小ささを実感しました。

ハーバード大学の教授や同級生と。ハーバード大学では、自分が言いたいことを英語でしっかり伝えていく力が国際社会で生きるうえで必要だと感じたといいます。

海外での仕事で感じたことや世界で活躍したいと考えている子どもたちへのメッセージは、後編に続きます。

プロフィール

 

【出身地】
郡山市育ち
【主な経歴】
東京大学法学部(法学部総代卒業)
東京大学法科大学院修了(首席卒業)
西村あさひ法律事務所勤務
アメリカ・コーエングループ勤務(日本人初採用)
フランス・経済協力開発機構(OECD)勤務

※この記事はaruku2024年8月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。