こおりやま広域圏17市町村の魅力を移住者の方の視点からご紹介する「わがまち魅力発見」。第2 回は、二本松市に移住された関元弘さん・奈央子さんご夫妻に「わがまち」の魅力を語っていただきます。
二本松市とは
二本松市は、郡山市の中心部から約20km北に位置する市です。
人口:50,626人(2024年8月1日現在)
面積:344.42平方キロメートル
アクセス:
【電車】東京駅より東北本線二本松駅まで約2時間、郡山駅より約20分
【車】東京より二本松市まで約3時間30分、郡山市中心部より約30分
見どころスポット① 二本松城跡
日本100名城のひとつに数えられ、霞ヶ城(かすみがじょう)の名でも知られています。幕末には戊辰戦争の激戦の舞台となりました。現在は霞ヶ城公園として整備されており、観光地として、また地域の人々の憩いの場として親しまれています。1982年に復元された城の正門「箕輪門(みのわもん)」は二本松市のシンボル的存在。毎年10月から11月にかけては、園内で「二本松の菊人形展」が開催されます。
見どころスポット② 岳(だけ)温泉
福島を代表する名峰・安達太良山(あだたらやま)の中腹にある温泉地で、千年以上の歴史を誇るといわれています。メインストリートのヒマラヤ大通り沿いを中心に多くの旅館が建ち並び、昔ながらの風情を残す温泉街の雰囲気を味わうことができます。泉質は全国でも珍しい酸性泉で、慢性皮膚炎やアトピーなどに効果があるとされるほか、酸性成分がお肌の角質を溶かすことから美容効果が高いともされています。
インタビュー:居心地が良いこと。居場所はここだと思えること。それが移住の本当の価値
山砂の土地を長年かけて農地に育て、冬は発泡酒を造る暮らし
―二本松市に移住したきっかけを教えてください。
元弘さん 農林水産省に勤務していた1999年から2000年にかけて、地方自治体との人事交流事業で、二本松市と合併する前の旧東和町(とうわまち)に赴任しました。私は東京・赤羽の生まれ育ちで町場暮らしの経験しかありませんでしたが、いずれは田舎で農業をして暮らすことをイメージしていたので、旧東和町で2年間生活したご縁を頼って2006年に移住し、農業を始めました。
奈央子さん 私は新潟市の出身ですが、新興住宅地のようなところで育ったので、同じく田舎暮らしの経験はありませんでした。農業がしたいという考えは私も同じで、岩手や長野など他の地域も見て回ったのですが、この地域のみなさんはとてもいい方ばかりで、決断の大きな決め手になりました。
―住まいや農地はどうやって見つけたのでしょうか?
元弘さん 面倒見が良くて人望が厚い、私にとっては地域の師匠のような方がいて、最初の頃はその方にかなりお世話になりました。この地域はかつては養蚕が盛んでしたが、今は廃れてしまい、桑畑の耕作放棄地がたくさんあります。そうした土地を借りて農業をスタートさせました。ただ、この辺の砂は山砂で、決して肥沃な土地ではありません。そこで最初の1~2年は、夏に野菜を育てる一方、冬には麦や大豆のようなイネ科・マメ科の作物を植えて、根をたくさん地面に入れることで土に有機物を供給する作業をしました。それだけで山砂を良い土に変えていくには時間がかかりますが、移住してもう18年経ちますので、最初の頃に比べればずいぶん良い土に変わってきていると思います。
―現在メインで作られているのはどんな野菜ですか?
元弘さん きゅうりやトマトなどの、いわゆる夏秋野菜です。春や秋には葉物野菜も作ります。また、こちらに来てから酒類製造免許を取得したので、冬場は山の片付けをしながら発泡酒を製造しています。原料の一部に東和地域で収穫された麦やホップを使用した発泡酒です。製造量は年間4,000~5,000リットル。330ミリリットルの瓶に換算して1万2,000本~1万5,000本ほどです。
瓶詰めした発泡酒は地元の「道の駅ふくしま東和」に置いてもらっているほか、インターネットでも販売していますが、商売として造るというより、農家の冬場のなりわいとして、農業の延長と捉えて造っています。
持続可能な農業を追求し、より魅力ある土地にしたい
―地域の方々との交流はどのように広げましたか?
奈央子さん 私は地域の教育委員を務めており、そこでも交流がありますが、ほかにもいろいろな組織があります。夫は消防団に入っていますし、私は女性(婦人)防火クラブや交通安全母の会、健康推進委員会などの団体に参加することで知り合いが増えていきました。最近ではマルシェを立ち上げるなど頑張っている若い子育て世代の方もいらっしゃるので、家族で移住されても溶け込みやすい環境だと思います。
―二本松市で好きな場所やお気に入りのものはありますか?
奈央子さん 日本酒がおいしいですね。味に旨みや深みがある感じがして。それと、東京から弟家族が来たとき、市内にある東北サファリパークに連れて行ったのですが、ちょうど桜の時期で、所々にいろいろな桜のスポットがあって楽しめたと言っていました。
元弘さん この辺は、桜並木よりも、見応えがある一本桜の名木が多いですからね。ほかにもパワースポットと呼ばれる隠津島(おきつしま)神社の三重塔やあじさいの名所などがありますが、そうした個々のものが良いというよりも、私自身は、ここにいるという、そのこと自体に良さを感じています。自分にとって居心地が良いこと。居場所はここだと思えること。それが移住の本当の価値なのだろうと思っています。
―移住後の生活で気をつけるべきことなどはありますか?
元弘さん 田舎の生活は「持ちつ持たれつ」であり、お世話になったらお返しをする意識が大切だと思います。ただし、それは単純にお世話になった人に何かを返す関係だけを意味するものではありません。地域のために何かをすることもお返しの一つの表現です。地域のつながりの中で生きていることを自覚し、そうした行動ができれば、田舎は非常に過ごしやすい場所になるのではないでしょうか。特にこの地域は、決して押しつけがましくない、遠くからさりげなく頑張りを見てくれている人がたくさんいると感じています。
――今後の夢や目標をお聞かせください。
元弘さん 持続可能な農業を追求したいです。昔のように山を使った、この地域に昔からあった農業の形を自分なりに取り戻したい。この地域にある無限の資源を農業に活用したいと、ずっと考えています。まずは自分がやってみて、うまくいけば、それを地域の仕組みとして広げていきたいです。円安や国際情勢の変化で資材費も燃料費も上がっていますが、そうした要素に振り回されてしまう外部経済化した農業を、いかに内部経済化するか。それに挑むチャンスは、平野部の農家ではなく、里山を持つ我々にこそあると思っているのです。
そうした取組が本当に実現すれば、条件不利地だと言われた中山間地域を条件有利地に変えることだってできるのではないか。条件有利地に代われば、移住を検討する多くの方が魅力を感じる土地になるのではないか。「あんなふうにできるのなら俺もやってみよう」と思ってもらえるのではないか。見果てぬ夢ではありますが、いつかはそんなことを叶えたいと思っています。
イベント紹介
二本松の提灯祭り
毎年10月の第1土・日・月曜に開催される二本松神社の例大祭で、城下町・二本松で360年受け継がれてきました。日本三大提灯祭りの一つとされ、鈴なりの提灯をつけた7台の太鼓台が各町内から繰り出し、市内を勇壮に練り歩きます。
■二本松の提灯祭り
日時(※令和6年度):宵祭り/10月5日(土)、本祭り/10月6日(日)、後祭り/10月7日(月)
会場:二本松神社及び市内中心部
料金:無料
木幡の幡祭り
市内東和地域に伝わる祭りで、国の重要無形民俗文化財に指定されています。起源は平安時代にまでさかのぼるといわれ、五色に彩られた百数十本もの幡(はた)が、法螺貝(ほらがい)の響きに乗って地域の霊峰「木幡山」を目指す祭りです。
■木幡の幡祭り
日時:2024年12月1日(日)
会場:隠津島(おきつしま)神社(福島県二本松市木幡字治家49)
料金:無料
その他のイベント
5月 安達太良山山開き
8月 智恵子の里安達(あだち)夏祭り
10月~11月 二本松の菊人形
10月 針道のあばれ山車
10月 小浜の紋付祭り
※この記事2024年10月に制作したものです。内容は取材当時のものです。