建設業は女性も活躍できる!新しい知識を吸収することもやりがい
普段どんなお仕事をしているのか教えてください。
田邊 私が勤めている株式会社エンドウは、県や市、国といった官公庁からの依頼を受け、地下に上下水道を新しく作ったり、修理したりする建設業の会社です。私は施工管理という仕事を担当しています。工事をする時には、必要な資材やスケジュールなどを計画する「施工計画書」が必要です。施工管理は施工計画書を作り、安全と品質を管理しながら、完成に向けて工事を進める役割を担っています。
工事現場と事務所と、どちらでお仕事をすることが多いですか?
田邊 半々ぐらいですね。書類の作成も多いですし、現場では規格通りに工事が進んでいるか確認する仕事もあります。水道管は土の中に作ります。簡単に確認はできないので、工事の発注者である県や市町村に工事の品質を証明するため、写真を撮って記録するのも大事な仕事です。
発注者から受け取った設計書通りに進められるかを考えるのも私の役割。水道管工事は本格的に始まる前に一部を「試験堀り」をして、設計書通りに進められるか確認します。変更が必要な場合は社内で技術者に相談しながら図面の修正案を作り、提案しに行きますので工事の技術に関する知識も必要です。
土木施工管理技士とはどのような資格ですか?
田邊 工事現場の管理者に必要な資格で、1級と2級があります。工事では、技術上の管理をつかさどる「主任技術者」と現場で指揮を出す「現場代理人」の2つを置く必要がありますが、1級を持っていればその両方を一人で務めることができます。また、1級を持っていれば、2級よりも扱える工事が増え、規模の大きな公共工事を受注することができます。当社が手掛ける工事の多くは1級の管理者を立てないとできない工事。人手不足の状況で、会社に貢献できていると実感し、やりがいを感じてます。
建設業の仕事を選んだ理由を教えてください。
田邊 実家が建設業を営んでいて、大きなトラックや重機を運転する父がかっこよくて、建設現場の仕事に憧れていたんです。でも、父は私を心配して「危ないよ」「男の仕事だよ」などと、それとなく建設業の道に進むことはけん制されていたように感じていました。そんなこともあり、高校を卒業して最初に入った会社は製造業。今の会社に転職した当初は、経理の事務職からのスタートでした。
そこから資格を取り、現場に出るようになったきっかけを教えてください。
田邊 産休・育休から復帰した後、経理から図面を書いたり書類を整えたりと、現場に近い仕事に移ることに。設計に使うソフトウェアを高校で学んだ経験が役立ったのです。経験を重ねてきた頃、1級土木施工管理技士として現場で活躍している専務に「資格を取ってみないか」と背中を押してもらいました。同じ会社に現場で活躍している女性がいることを知りながらも、心の奥で幼い頃から刷り込まれた「建設業の現場=男性のもの」という固定観念があり、なんとなく足踏みしていたのですが、一人目の娘が生まれたことも大きく、一歩踏み出そうと思いました。娘にはやりたいことをやってほしいし、私も自分の親のように、子どもにかっこよく仕事をする姿を見せたい。そんな思いで、資格取得のために猛勉強をスタート。2人目の子どもを出産した後の35歳で1級を取り、本格的に現場に出られるようになりました。いまが理想の働き方に近いです。
1級を取るまでにどのぐらいの期間がかかりましたか?
田邊 子育てしながらほとんど毎日試験勉強をして、1級を取るまでには丸2年かかりました。1回目の試験は次女の出産直前で、同僚に肩を借りながら会場へ。試験には実地試験と筆記試験の2つがあります。実地は工事に関する経験から答えるもの、学科は水道工事を含めた土木工事の管理に関する幅広い知識を問う内容です。1年目に学科は受かり、2年目は実地の試験に集中できました。無事に両方を合格できて1級の資格を手にしたときは、本当にうれしかったです。
お仕事のやりがいを教えてください。
田邊 資格を持っているからこそ、新しい知識や技術を吸収し続けなければならないと思っています。できるようになる・わかるようになるということそのものがやりがいになるし、チャレンジを続けるエネルギーにもなります。男性が多い職場ですが、人手不足もあり残念ながら育休の取得率は高くはありません。しかし、男性社員に子どもが生まれた時、仕事は私に任せて遠慮なく育休を取ってもらえるように、経験を積んでいきたいです。
これから将来の夢を考える子どもたちにメッセージをお願いします。
田邊 自分の思いを言葉にすることをあきらめないでください。整理がつかなくても、うまく伝えられなくても、言葉にする努力をしていくと自分がやりたいことを実現できる道も拓いていくはずです。
プロフィール
【お名前】
田邊さん
【最終学歴】
郡山北工業高校環境システム科
【好きな言葉】
継続は力なり
【休日の遊び方】
子どもよりも全力で遊ぶ!
※この記事はaruku2024年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。