研究による地域づくり、教育による人材輩出―。両方の面から社会貢献を目指しています。
岩城さんはどんなお子さんだったのですか?
岩城 私が子どもの頃はとにかく外で遊ぶ子どもでした。家の周りに自然が多かったので、友達と虫取りをしたり釣りをしたり…勉強そっちのけで1日中遊んでいましたね。勉強が嫌いだったというわけではありませんが、ちゃんと勉強し始めたのは高校受験前からだったと思います。
そんな岩城さんが大学で土木工学の分野に進んだのはなぜですか?
岩城 進学は父の勧めですね。私が子どもの頃は高度経済成長期と呼ばれ、高速道路や新幹線、本州・四国連絡橋、青函トンネルなど大きな土木構造物が次々にできた頃でした。そんな時代でしたから、父は将来性がある分野だと感じたのでしょうね。まあ、私は手先が不器用だったので、大きな物を扱う方が性に合っていると思ったのかもしれません。父の勧めで進んだ分野でしたが、その道で仕事をしたい!と強く思ったのは大学3年の時です。夏休みに企業実習で東北新幹線の建設現場に行く機会がありまして、その規模や技術にすごく圧倒されたんです。その時に自分も将来、日本のインフラを支えるような仕事をしたいと思いましたね。
現在岩城さんはコンクリート工学や社会基盤メンテナンス工学を専門とされていますが、どんな研究をしているのですか?
岩城 一言で言えば、安心・安全な構造物を造ることです。今、日本では1960~70年代に造られたコンクリート構造物の老朽化が問題となっています。私はそれに危機感を持ち、今後100年経っても使えるような、丈夫で長持ちするコンクリート構造物の研究をしています。現在、東京大学と共同で研究しているのが、色んな種類のコンクリートを使って耐久性を調べる「ロハスの橋」というプロジェクトです。水とセメントの配合を変えてみたり、特殊な粉体や薬剤を加えたりした6種類のコンクリートを、雨、雪や風、暑さ、寒さなど色んな影響を見ながら1年かけて調べています。ここで開発したコンクリートを復興道路に応用したいと考えています。
自分が開発した技術が道路に使われるなんてとても誇らしいですね。
岩城 そうですね。でも古いものを新しいものに変えると言うのは簡単ですが、過疎化・高齢化が進む地域の道路や橋は、古くなってもなかなか変えられないのが現状です。技術や人、なによりお金がかかりますからね。私が研究開発の他にもう一つ手がけているのが「自立した地域づくり」です。市町村とそこに住む人々、民間企業、大学が一緒になって、維持管理をしながら道や橋を長持ちさせる運動を推進しています。することは清掃や塗装など一見地味なことですが、コンクリートは歯みがきと一緒でこまめな手入れが必要なんですよ。みんなの意識が高まれば、将来的に自立した地域づくりのきっかけになれると思います。時間はかかるでしょうが、“ふくしま発”の自立共生型の地域モデルを実現させるのが私の夢です。
研究と教育、どちらも関わる大学教授の役割はどんなことだと思いますか?
岩城 大学は人材育成のための教育の場です。技術者や研究者など人を輩出すること、そして社会貢献できる研究成果を生み出すことだと思います。日大工学部へ来る前は母校の東北大学で教えていたのですが、そこでは先端技術の開発がとても進んでおり、研究環境もとても整っているところでした。でも、私の中では研究成果をもっと人や地域のために役立たせたいという思いが強くありまして。それで、研究開発と地域貢献の両方に力を入れられる場所で研究したい、学生に教えたい、と思い日大工学部に来たのです。
将来の日本を担う子どもたちにメッセージをお願いします。
岩城 みなさんは普段勉強をしているときに、これが将来なんの役に立つの?と思うことがあるかもしれません。でも、勉強というのは知識を身に付け、よく考えること。この2つを繰り返すことで、将来、社会で生きるために役立つ能力が身に付くのです。でも勉強だけでなく、友達とよく遊び、語り合うこと。そして部活でも趣味でも何でもいいので、やりたいことを見つけたら一生懸命努力し続けることも大事だと思いますね。
- 日本大学 工学部 土木工学科 岩城 一郎(いわき いちろう)さん
- 出身地
- 東京都立川市
- 出身校
- 東北大学 工学部 土木工学科
- 座右の銘
- 世のため人のため
- お休みの日の過ごし方
- テニスやジョギング。家族と一緒にランチをしたりショッピングしたりお出掛けすること。
※この記事はaruku2015年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。