毎朝揚げるカツサンドが一番人気。
城下町、会津。古い町並みが残る七日町通りを神明通りの東に一本入ると、長屋づくりの建物が見えてきます。大正時代から続くという「吉田菓子舗」。店先のレトロなショーケースに、懐かしい風情の惣菜パンや菓子パンが積まれています。アンパン、カレーパン、バターパンと並ぶ中で、一番人気は『トンカツサンド』。自家製パン粉をまとった揚げたてトンカツを、特製ソースにドボンとつけて、千切りキャベツが敷かれたコッペパンへ。しっとり柔らかなパン生地に、甘辛い薄切りカツがよく馴染み、意外なほどあっさりいただけます。これはクセになる味!ところで、なぜ和菓子店がパンを…?
昭和の時代から愛されてきたお店と、ロングセラーのパン。ソウルフードとも言える懐かしい味に心が震えます。
「パンは生き物」とおっしゃる店主の弘治さん。条件が毎日違うなか、3種類のパン生地を、水・バターの量や発酵温度・時間を調整しながら作ります。60年ものの作業場では古い扇風機も現役。「店は古いけど味があると言われます」と女将が笑います。
トンカツもコロッケもすべて当日朝に手揚げしています。衣に使うのはパン屋さんならではの自家製生パン粉!サクッと軽い歯ごたえとしっとりコッペパンが好相性。
老舗和菓子店のパンづくりは、配給品の委託加工がはじまり。
「私がお嫁に来た時にはもうパンを作っていました。」と話して下さったのは、女将の淑子さん。「戦争が終わって、コンミール(とうもろこしの粉)が配給されていた頃、“何とかおいしくならないか”と言う近所の方から材料を預かってパンに加工したのが始まりだと聞いています。それが少しずつ広まって商売になり、少し小麦が出回るようになると、サッカリン(人工甘味料)を混ぜてクリームを作るようになりました。昭和30年頃にやっと原料が手に入るようになり、徐々に美味しいパンが作れるようになったんです。高度成長期には洋菓子も作ったんだけれど、やはり和菓子一本で行こうと商売を絞りました。ただ、パンだけは美味しいと言ってくださる方が多くて作り続けているんです。」なるほど、歴史が古いという事は激動の時代を生き抜いてきた証。懐かしいパンの奥に町の人と共に歩いた時間があるのだと、改めて気づかされます。
木枠の引き戸がなんともレトロなショーケースに、懐かしい風情のパンが並びます。昔から変わらないような顔をして、実は時代に合う味に少しずつ変化しているとか。
上生菓子はお城の茶席御用達。
吉田菓子舗の店頭には、季節の上生菓子が沢山並んでいます。デザインも現代的で色美しいものばかり。この道40年の職人さんが色・形を考え、すべて手作りしているのだそうです。お城の茶席御用達で、お客様にはお茶の先生も多いとか。素朴なパンと上品な和菓子のコントラストもお店の魅力です。
arukuスタッフも歓喜した美しい上生菓子。お店の和菓子は、ミニサイズのお饅頭まで全てが和菓子職人さんの手作りです!看板商品は、ひと口サイズの「巴もなか」。