女性のための医療コラム
「PCOS-新しいタイプの月経不順が増えている!?」
A子さんの悩み
A子さんが16歳の時、何気なく健康雑誌をめくっていて、PCOS の女性の記事が目にとまりました。そして、彼女が悩んでいた月経不順の原因は「これだ」と思いましたが、看護師や医師に相談したところ、一様に「月経不順は10代ではよくあることだから、気にしないほうが良い」と言われました。ところが、18歳になった頃、髪の毛が落ち始め、ニキビが増え、急に肥りだしたそうです。
PCOSとは?
近年、若い女性の間で新しいタイプの月経不順が増えているのをご存知でしょうか。それは、PCOS(多のう胞卵巣症候群)と言われる婦人科疾患です。症状としては、月経不順や無排卵に伴う不妊、肥満、インスリン抵抗性(将来、糖尿病、高血圧、高脂血症になるリスクが高い)、ニキビなどです。
排卵障害では多くみられる疾患で、卵胞が発育するのに時間がかかったり、卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてしまうせいで、排卵しにくくなる疾患です。排卵されない卵胞は卵巣にとどまるため、超音波検査でみると、たくさんの卵胞(嚢胞)を認めることから、多のう胞性卵巣と呼ばれます。女性の5~18%の人が罹っていると言われ、年々増加傾向にあります。『子宮内膜症』と並んで、女性の不妊原因の双璧とも言われています。
原因についてはまだ解明されていませんが、最近の論文(注1)では、私たちの生活に欠かせないプラスチック製品に含まれるBPA(ビスフェノールA)という環境ホルモン(内分泌撹乱物質)が関与しているのでは?と言われています。
英国栄養学会では低GI食品(インスリンを高めない玄米、全粒粉、豆類など)を中心としたベジタリアンダイエットが、多くのPCOS に有効と唱えています(注2)。ですが、3ヶ月以上月経がこない場合(無月経)や、気になる症状が出たら本格的な排卵障害になる前に婦人科医師に相談してください。
1)Gynecol Endocrinol. 2018;34(5):370-377
2)Nutr Res. 2014;34(6):552-8.
お話をうかがった先生
富永國比呂先生
1975年、岩手医科大学医学部卒業、東京衛生病院産婦人科医長を経て、米国ロマリンダ大学大学院博士課程修了。日本産科婦人科学会専門医、日本性感染病学会会員、医学博士、米国公衆衛生学博士(Dr.P.H.)、国際個別化医療学会幹事、Personalized.Medicine Universe査読委員。
※この記事はaruku2018年11月号に掲載したものです。