蒔絵作家の二瓶由布子さん。同じ蒔絵作家であるお父様の仕事を見て育ったと言います。漆という素材と、生活雑貨に描けることが魅力とのこと。細かい植物柄も幾何学模様も手描きです。
値付は技法によって異なりますが、お箸は3,240円。
漆器の郷に生まれた新しい感性。
漆器の伝統を今に受け継ぐ会津。細い路地を迷いながら訪ねた「ほくるし堂」は、昭和のインテリアと鮮やかな色鉛筆の壁が共存する、とてもお洒落なアトリエでした。お話を聞いた二瓶さんは、漆器の上絵を描く蒔絵師さん。気さくで明るい彼女が創るのは、色鮮やかな花柄や幾何学模様が可愛らしい、漆の食器やアクセサリー。その作品は、黒や朱色を基調とする会津漆器とは全くイメージが違います。二瓶さんにとって漆器の魅力とは何なのでしょう?
「漆の塗り物は縄文時代からあって、腐蝕しないまま発掘されるほど丈夫です。剥げても塗り直せるし、抗菌作用があるという実験結果もあります。伝統を守っている意識はあまりないですが、会津漆器ならではのマットな質感は好き。吸い付く様なしっとり感があると思いませんか?普通の塗料なら乾燥したところで乾かすのに、漆を硬化させるには湿度が必要だというところも面白いですよね。私としては、日常使いの道具に絵を描けることが一番の魅力です。」
秘密基地みたいなギャラリーに、二瓶さん父娘の作品がいっぱい。螺鈿や乾漆、金粉を使った表現など多彩な技法があり、どれも驚くほど可愛い。
漆塗りの工程見本。ひとつの作品には幾重にも手間がかかります。木地・塗り・蒔絵の工程専門の職人さんがいるのだそうです。
漆は元々が飴色のため、白い顔料を混ぜても絵を描いた直後はベージュ。年月と共に漆自体の透明度が増し、きれいな白へと変化していきます。
下の漆が硬化しなければ上に線が描けません。小さな絵の中にも、時間が流れているのです。
不定期でワークショップを開催。絵付けや蒔絵が体験できます。詳しくはHP(hokurushido.strikingly.com/)で。
色と柄は、家の中で楽しく過ごすために。
「ほくるし堂」のテーマは「東北×ほくほく×北欧」。二瓶さんのものづくりは、北欧の価値観に学んだ部分が大きいと言います。
「フィンランドに行った時に、室内のカーテンやクッションカバーが明るいのがすごく素敵でした。フィンランドの冬は、寒くて暗い季節。どこか会津に似ています。でもフィンランドでは、家の中でいかに楽しく過ごすかを考えて、春夏の植物や明るい色で彩るという発想になったらしいんです。その考え方がすごく好きだなと思いました。伝統の漆器も素敵だけれど、私は、家の中で楽しく暮らすために、ウキウキした気持ちになれる食器やアクセサリーを作ってみようと思って。昔からある伝統の模様も、形をデフォルメしたり大胆な配置にしたりして、北欧のテキスタイルに近付けています。そういう柄を日本的な色で描くことにもハマっています。」さらに今後は、漆を伝える活動を重視していきたいとのこと。「今は漆が樹液だと知らない人も多い。どんなに手間を掛けて作るか、作る楽しさを体験しながら感じてもらいたいと思っています。」
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※この記事はaruku2019年2月号に掲載したものです。価格や内容は取材時のものです。