畳のへりを、レトロで可愛い和雑貨に。
須賀川市で280年の歴史を持つ「久保木畳店」。江戸時代から続く畳織の職人技を受け継ぐ傍ら、女性ならではの感性とアイデアで様々な形にアレンジした畳のへりの和雑貨が注目を集めています。製作に携わる久保木彩歌さんにへり雑貨が生まれた経緯を伺うとこんな答えが返ってきました
「生活スタイルが変わっていくにつれて、床材としての畳本来の需要は年々減ってきています。若い世代の人たちにも畳の良さを伝えられないかと考えていた時に、へりの生産が盛んな岡山県の倉敷で開かれていた畳の博覧会にインスピレーションを受けたんです。和裁をしていた母が趣味で縁を使った小物を作っていたこともあり、うちでもやってみようと小さなバッグからスタートしました」。
軽くて持ちやすいと年配の方から人気を博しただけでなく、レトロポップな和柄のデザインは今のファッションにもしっくりなじみます。多彩な柄から好きなものをセミオーダーできるのも魅力です。
楽しむ気持ちが伝統を継ぐ原動力。
へりバッグ以降、コサージュやブローチ、ご祝儀袋にペンケースと次々に新しいへり商品を出してきた「久保木畳店」。「へりは8cmと幅が決まっているのでそれに合わせて作るのが難しさでもあり面白さでもあります。裏表を組み合わせることで表情の変化が生まれるのも楽しいです」。と、その魅力を語る彩歌さん。また、最近ではコースターやランチョンマットなど、畳そのものを取り入れた商品も増えてきています。
「畳って普段は足で触れるものですが、こうやって形を変えれば目で見て、手で触れて、香りも感じられる。もっと五感を使って楽しめるんです。そうすれば、日本人や海外の方も気軽に日本文化に馴染んでもらえると思いますし、伝統を伝えていけるかなって」。頑なに伝統を守るのではなく、楽しみながら伝統を引き継ぐ素敵な関係が伺えます。有名ブランドとコラボしたりミシュランの星を獲得した飲食店からのご指名を受けたりと、活躍の幅をどんどん広げている「久保木畳店」。今後もあっと驚く畳の楽しみ方を提案してくれるのか楽しみです。
※この記事はaruku2021年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。