企業や個人事業者に対し、税務や会計業務をはじめ、経営のサポートまで担う税理士にお話を伺いました。
税理士はお金の管理だけでなく、地域の未来をつくる仕事でもあるんです。
税理士を目指したきっかけを教えてください。
大野 高校生の時進路選択の時期に、偶然聞いてしまった母の言葉がきっかけです。特にやりたいこともなかった私を見かねて、飲食店を経営する父は自分の会社にと考えていたそうですが、経理を担当している母が「私たちがいなくなったらあの子はどうやって生きていくの?」と話しているのを聞いてしまったんです。
その時大野さんはどう思われたのですか?
大野 18歳にもなってこんなに心配されているのかと、めちゃくちゃ悔しかったですよ。でも、過去を振り返ると心当たりしかなくて。野球や空手など部活動もしていましたが、何かに本気で取り組んだ経験も強みもない。漠然と、このままだと社会で生きていけないなと思ったんです。たまたま簿記の勉強をしていたことや、母の仕事を見ていたこともあり、会計には興味を持っていました。そこで「何をやりたいか」より「何ができるか」を選択しました。一度でいいから本気で勉強しよう、難関と言われる税理士になってやろうと思い、会計の専門学校に進学したんです。
税理士になるためにどんなことを学んだのですか?
大野 税理士試験を受験するためには、一定の学歴や資格が必要です。そのためにまず、日商簿記検定1級合格を目指しました。朝8時~夜10時まで勉強し、寝るか勉強するかだけの生活でしたが辛くはなかったですね。簿記や会計って、どうしてその仕分けや内訳になったのか、必ず理由があって、調べていくと答えが分かる。それがすごく面白いんです。1級取得後は税理士試験に向けて会計学や税法を学びました。税理士になるには国が定める税理士試験の内、5科目に合格しなければなりません。私は5年かけて合格したのですが、周りには2,3年で合格する人もいて、劣等感を感じましたが、そのおかげで頑張れたんだと思います。
大野さんは現在税理士としてどのようなお仕事をされているのですか?
大野 主に企業の税務代行を行っています。企業は年に一度、国に納税をしなければなりません。税法は煩雑で分かりづらい部分もあるため、専門的な知識を持つ私たちが、納税申告やそのための書類作成もしています。また、経営者の方から税金や今後の事業展開、さらには従業員の賞与などの相談を受けることもあります。税理士は会計・財務という確かな情報を基に、企業経営において客観的にアドバイスできる仕事です。経営者でもいろいろなタイプの方がいますし、その人に合わせた提案を心掛けています。企業の運営が上手くいって感謝されると嬉しいですし、やりがいを感じますね。
反対に大変だなと感じることはありますか?
大野 私はこの事務所に来て4年目になるのですが、専門的な分野のため慣れるまでは大変でしたね。性格上なかなか周りに頼り切れないところがあり、現在担当しているお客さまの決算時期が重なっているため、必然的に忙しくなることもあります。また、提案してしまったがために自分で仕事を増やしている自覚もあります。しかし、すべては10年後、20年後のお客様のためですし、自分が担当したことによって企業が成長してくれることを考えれば、大変なことも頑張れます。
今までの仕事の中で印象に残っていることは何かありますか?
大野 「自分の会社は何のためにあるのか、結局は地域に必要な会社が残るんだ」と話す経営者の方との出会いです。自分が抱える従業員のことだけでなく、地域の将来のことまで考えて事業をしているんだなとわかった時に、すごいなと思いました。また、その企業を会計や税法の面から支えていける税理士の仕事がもっと好きになりました。私たちが担当しているお客さま(企業)が、地域にとって必要な会社であると証明するためにも、これからも全力でサポートしていきたいと思っています。
今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?
大野 一つは興味を持ってもらえるよう指標や帳票づくりをすることです。もう一つは近年ニーズが高まってきている「組織再編」についての知識を増やしていくことです。少子化や担い手不足といった問題は、その地域の未来にも大きく関わってきます。企業の組織や形態を編成し直すことで、税制の面だけでなく雇用といった面でも守っていくことができますし、今後ますます需要があると思います。経営者の意志に寄り添った提案ができるようになりたいですね。
税理士を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。
大野 税理士はいろいろな方のお金や人生に関わることのできる仕事です。人生経験豊富な方とお話しする機会もたくさんあり、自身の成長にも繋がって、とてもやりがいがあると思います。また、大人になる前に何かに本気で取り組んでみて欲しいです。例え挫折したり失敗したりしても、その経験は誰にも奪えないし、自分の財産として強みになると思いますよ。
- 大野(おおの)さん
- 座右の銘
- 迷ったらどっちが楽しいかで決める
- 休日の過ごし方
- 散歩、ドライブ
※この記事はaruku2021年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。