市場調査から商品の仕入れ、販売という接客を通して商品の魅力を伝える。流行を作り出すこともあるバイヤーにお話を伺いました。
好きという想いが強いからこそ、商品の魅力を伝えられる仕事だと思います
小さい頃はどんなお子さんでしたか?
齋藤 お家とものづくりが好きな子どもでした。母も家が好きだったので、住宅展示場や本を見てこんな家いいよねとか、このインテリアおしゃれだねとか、よく話していましたね。そのせいか照明や家具などのプロダクトデザインに興味があって、高校ではデザイン科、大学では鋳金(ちゅうきん) ※ を学べる学科に進学しました。地金が好きだったので卒業後はジュエリーを作る側か、バイヤーのようにいろいろな商品を知れる立場になりたいと思ったのがきっかけとなり、現在はインテリアショップでこのお仕事をさせて頂いています。
※鋳金…高温で溶ける金属の性質を活かし、鋳型(いがた)と呼ばれる型に溶けた金属を流し込んで形を作る技法
バイヤーといってもさまざまな分野がありますよね。
齋藤 私の場合インテリアやものづくり、特にクラフトが大好きだったので、そういったものに触れられる場所で働きたいと思っていました。京都にいた時はブランド洋食器を取り扱う会社で働いていたこともありますが、よりこだわりが詰まった造り手の想いが見える物を知りたい、学びたいと思っていた時に、300年位前の帯問屋を改装したギャラリー兼ショップスタッフの募集を見つけたんです。私のためにあるようなお店だ!と運命を感じましたね。
そのお店ではどんなものを取り扱っていたのですか?
齋藤 帯問屋ということもあり、着物などの伝統工芸品から食器類に文具まで、さまざまなクラフトを扱っていて、まだまだ私の知らない物があるんだと思うと毎日が楽しくワクワクしました。商品の仕入れから店内ディスプレイも担当していたのですが、その時に出会った河村寿昌さんのボールペンやはなもっこの時計、そしてモメンタムファクトリーの花器などは、その美しい佇まいや使い心地の良さに惚れ込み、福島でも取り扱いたいと思っていました。震災を機にこちらに戻り、今のインテリアショップで仕事を始めてからも、それらをはじめ家具や食器など、職人が魂を込めて作るクラフトや本物の良さをだんだんと知ってもらえているのかなと感じています。また、ギャラリーでの企画展もとても勉強になり、その経験がワークショップなどの開催に役立てられています。
お店で販売する商品はどのようにして見つけているのですか?
齋藤 首都圏で開催されるクラフトの見本市に行ったり、旅行に出かけた時に見つけたり、常にアンテナを張るようにしています。昨年はコロナ禍ということもあり、直接見に行くことはあまりできなかったのですが、オンライン上で見学をしたり、SNSを通じて商品を探したりもしていました。気になった物はなるべく直接見に行くようにしていて、作家さんのこだわりや想いを直接聞くことで、お客様により正確に、熱を持って案内ができると思っています。
バイヤーとして働く中で、嬉しさや難しさを感じるのはどんな時ですか?
齋藤 もちろんお店として在庫をしっかりと確保し、お客様が求める商品を流通させることも大事だと思います。しかし、私が今働いているインテリアショップは、まだ世に知られていない物を発信し、お客様に案内していく役割も担っていると思うんです。作り手の熱い想いをお客様に橋渡しできるポジションでもありますし、私たちの伝え方次第で商品の魅力が伝わるかどうかも変わってきます。商品を選ぶ際にあなたに相談して良かったと言われるとやはり嬉しいですし、反対に商品の売れ行きが悪いときは、商品の魅力や造り手の想いを充分に伝えきれなかったのかなと思うこともありますね。
お店作りで気を付けているところはありますか?
齋藤 ショップでは値札をなるべく目立たないようにしています。金額だけで商品を判断してほしくないからです。クラフト製品は量産できないためどうしても高価になりがちです。でも、そこには造り手のこだわりや想いが込められていて、それを知ってもらうために私たちのような存在があると思うんです。だから、商品をネットで購入するよりも、実際に手に取って選んでほしいですね。また、地方は首都圏に比べると流行が少し遅れて入ってくるため、そのタイミングを見計らって商品を仕入れるようにしています。
販売や接客業を目指す子どもたちへメッセージをお願いします。
齋藤 まずは自分を好きになってください。私も大学の先生に言われたのですが、自分を認めてあげることで、相手の良いところを見つけて認めてあげられるようになります。これは商品に対しても友達に対しても同じで、良いところを1つ見つけてあげることで、それが会話の糸口となり、相手とのより良い関係性が作れると思いますよ。
- 齋藤(さいとう)さん
- 座右の銘
- 自分を好きになりなさい
- 休日の過ごし方
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※この記事はaruku2021年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。