障がいを持つ方の生活に密着しながら、生活の介護や自立訓練をサポートする生活支援員の方にお話しを伺いました。
自己実現のお手伝いができるって、他ではできない仕事だと思います
小さいときから福祉のお仕事に興味があったのですか?
渋谷 もともと人と話すことが好きで学生の時からボランティア活動も参加していました。目指すきっかけになったのは、高校生の時にボランティアで老人ホームのデイサービスに携わったことです。施設で働いているスタッフの方々が、利用者さんだけでなく私たちにも優しく丁寧に教えて下さり、利用者さんと楽しい時間を過ごせたことで、私も介護職の道に進みたいと思うようになりました。
生活支援員を目指したきっかけは何ですか?
渋谷 高校卒業後は介護福祉士を目指して専門学校に進学し、入浴や食事の介助、心理学などを学びました。その中で、障がい者支援を行う宇津峰十字の里で1か月間の実習を行うことになったんです。初めは老人ホームとも違う独特な雰囲気で、利用者の方とも何を話せばいいのかわからず緊張もしていました。しかし、だんだんと利用者の方と意思疎通が図れるようになり、介護職といっても色々な選択肢があるなと思ったんです。
普段のお仕事ではどういったことをされているのですか?
渋谷 生活全般の介助のほか、自立へと向けたトレーニングなどのプラン作成や、福祉サービス申請の書類制作などを行っています。年齢や障がいの程度も人によって違うので、一人ひとりに合わせたサポートがとても重要です。また、1ヶ月ごとにプランを見直し、最適なサポートができているか、一人でできるようにするにはどうしていけば良いかを、周りの職員とも相談し決めていきます。私たちが支援すると言っても、利用者本人の協力がなければ成り立たないので、信頼関係を築くのが自立への第一歩なんです。
どうやって利用者の方と信頼関係を築いているのですか?
渋谷 とにかく相手の話を聞いて、受容することを心掛けています。相手の分かってほしいという気持ちに寄り添うために、言いたいことは途中で口を挟まず、最後まできちんと話を聞くことを意識していますね。施設を利用する方は自分の感情や思っていることを上手く表現できないもどかしさや不便さを感じていて、そのせいで少なからず傷を負っている部分もあると思うんです。だから、私たちはどうやったら理解できるか、本人が周りに頼れる環境づくりと、周りとの上手な関わり方を一緒に築いていくのが一番の支援なのかなと感じます。
これまでで一番大変なこと、反対に嬉しかったことは何ですか?
渋谷 自分で自分を傷つけてしまう方がいらっしゃったのですが、最初はどう対応すればよいのか頭を抱えました。何をやっても意思疎通が図れなくて。でも、同僚や上司などに相談して接し方を変えたり、声をかけるタイミングを変えたり、試行錯誤しながらも心を通わせられた時は、利用者さんとの関係も自分のスキルも、一歩ステップアップできたと感じました。
本人も落ち着いて周りと関われるようになっていったので、この仕事をやっていて良かったなと思いましたね。その方は卒園して現在は自宅で生活しているのですが、自分が望む暮らし、こうなりたい、こうしたいという「自己実現」のお手伝いができたことは、嬉しくもあり自信にもつながりました。
渋谷さんは相談支援員専門員としても活動されているとお聞きしました。
渋谷 支援員としての経験を積み、研修を受けて相談支援専門員の資格を取得しました。これまでとは違い、施設以外の方とも接する機会が増え、発達障がいが見られるお子さんの学校での様子を確認したり、放課後等デイサービスを受けるための利用計画立案や提出書類の制作をしたりしています。施設内で働くだけでは得られなかった仕事の幅や、支援に関する新しい情報や地域情報などを知ることができ、大変ながらも有意義な活動になっています。また、そこで得た新しい知識を施設で共有することで、施設内でもより良い支援に繋げられているのかなと思います。
福祉のお仕事を目指す子どもたちへメッセージをお願いします。
渋谷 自分以外の人の人生に携わる仕事は大変なことも多いですが、困難な事に直面するからこそ、乗り越えた時や充足感は他では味わえないものだと思います。自分よりも人のために行うことが多いですが、その人が安心して生活を送れるサポートができることを考えると、とてもやりがいのある仕事だと思いますよ。
- 渋谷(しぶや)さん
- 休日の過ごし方
- 音楽鑑賞
- 座右の銘
- 継続は力なり
※この記事はaruku2022年4月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。