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公開日:
2024.9.12
更新日:
2024.9.12

国際弁護士<後編>|プロフェッショナル夢名鑑

国際弁護士<後編>|プロフェッショナル夢名鑑

世界で勝負してきた経験を、日本や故郷のために使っていきたい

アメリカ・パリと海外経験を積んできた根本さん。海外へ出ていくことの意義について、「さまざまな人種や宗教、価値観を持つ人がいると知ることで、自分の当たり前が当たり前じゃないとわかること」と話します。

ハーバード大学の法科大学院を卒業後、そのままアメリカで就職した理由を教えてください。
根本 アメリカは日本にとって、とても重要な国です。日本と他国の懸け橋となるような仕事をするうえでは、アメリカ社会をもっと知らないといけないと考えました。そのために、「コーエン・グループ」という、米国のビル・コーエン元国防長官が設立した会社に初の日本人として就職。
依頼者である企業が、さまざまな国の政府に物やサービスを売るための戦略を立て、実行する仕事を担当しました。また、国の制度がビジネスの障壁になる場合は、ルールの撤廃や変更を政府と交渉することもありました。

どんな苦労がありましたか?
根本 最初は見習いのようなポジションで入ったのですが、英語のハンデや国の制度の違いもあり、例えば会議の議事録でさえも、うまくまとめられませんでした。そんな中、さまざまな日本企業へ売り込みをかけて、1社の契約に成功。
それを機に、周囲の私を見る目が変わりました。契約を取り、結果を出すことが評価される。まさに実力主義を肌で感じ、アメリカという国が伸びているゆえんを感じました。

その後、国際機関である経済協力開発機構(OECD)の職員になった経緯を教えてください。
根本 国際社会で活躍したいと考えるうえで、国際機関には憧れがありました。そんな時に、イタリア人の友人が、OECDの求人を教えてくれたのです。OECDの正規職員の選考の倍率は数百倍といわれており、正直受かる気がしませんでした。
一方で、加盟国に対する政策の提言をしたり国際ルールを作る手助けをしたりする機関であるOECDで、より良い国際ルール作りに貢献することは魅力的でした。また、(OECDがある)パリで暮らすことが妻の夢でもありました。そこで、自分と妻の夢をかなえるために思い切って選考に応募しました。

OECDではどんな経験をされてきたのか教えてください。
根本 弁護士として、これまでは決まったルールを使う側でした。しかし、OECDでは加盟国に政策を提言し、ルールを作ることに携わることができました。自分の政策提言が、G7やG20といった国際会議の場で各国の大臣たちによって議論されるんです。
このように、世界のルールは、国と国の間でだけではなく、OECDのような国際機関の影響があって決まるというダイナミズムが学べたこと、そして自分が携わった政策提言が確かに国際ルールの基礎となっていったことは、とても大きな経験になりました。

海外での経験は、帰国してから再び弁護士として働いた際にどのように生かされましたか?
根本 国際的なルールはどんどん変わります。しかし、国際ルールや海外の政策が作られる過程の情報を日本企業が得ることは難しく、いつの間にか日本企業にとって不利なルールができ、対応が遅れてしまうことがあります。
私は海外での経験を通じて、貿易に関する国際ルールや、欧米の政策ができていく仕組みがよくわかりました。それを理解したことにより、国際的なルールができる前の段階で情報を得て、今後どんなことに気を付けるべきか早めに企業にアドバイスできるようになりました。

現在は、郡山市を拠点に活動しています。今後はどんなことに挑戦したいと考えていますか。
根本 今後は政治の道に進み、自分の故郷である郡山や福島県、そして日本を良くして、世界に誇れる地域・国にしていきたいと思っています。具体的には、一つ目として、弁護士としての感覚を生かしながら、正義にかなう制度や法律を作ること。
二つ目は、自分が世界で勝負して得た知見や経験を、日本のために使っていくこと。海外で勤務して、国際的に通用する日本の政治家が少ないことに危機感を持ちました。私は、外国のリーダーと対等に渡り合い、議論し、一方で良い関係も築いて、日本を守り、発展させていきたいです。三つめは、日本をより生きやすい社会にすること。
海外経験を通じて、たとえば子育てのしやすさや女性の働きやすさを実現する外国の優れた制度や文化を学びました。日本の良いところを残しつつ、海外の見習うべき制度や文化を取り込めば、日本はもっと良い国になると考えています。

来は世界で活躍したいと考えている子供たちにメッセージをお願いします。
根本 何よりも、世界は決して遠いものではないということを伝えたいです。小さいころから海外に意識を向け、努力を積み重ねることで、将来世界に羽ばたいていける可能性が広がります。海外で生きていくためには、語学や学力だけではなく、「インクルーシブ(包摂的)」なマインドを持つことがとても重要です。
自分とは異なる考えや価値観を持つ他者を尊重し、受け入れ、思いやる。このような姿勢を持つ人が増えることは、日本社会を良くすることにもつながるはずです。これからの時代を担う子どもたちともそんな思いを共有しながら、一人ひとりが尊厳を持って生き、一人ひとりが輝く社会を一緒につくっていけたら嬉しいです。

コーエン・グル
ープのコーエン元米国国防長官と。会社よりも家族や自分の国をリスペクトする価値観に、大きな影響を受けたのだそう。

故郷に戻って改めて福島の農産物のおいしさを実感し、全国に発信していきたいと語る根本さん。写真は「郡山ブランド野菜」作りなどに取り組む鈴木農園の鈴木清美さんと。

プロフィール

 

【座右の銘】
なたが世界において望む変化をあなた自身が体現しなさい
(Be the change you wish to see in the world:マハトマ・ガンジーが言ったとされる言葉)
【お休みの日の過ごし方】
妻と子どもとお出かけする

※この記事はaruku2024年8月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。