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公開日:
2025.1.6
更新日:
2025.1.6

法医学医|プロフェッショナル夢名鑑

法医学医|プロフェッショナル夢名鑑

声なき声に耳を傾ける、法医学医にお話を伺いました。

事件捜査の一翼を担えることがやりがいです

法医学医に向いている人について、「じっくり真実を追求したい人、自律的に仕事ができる人、ある程度の体力がある人」と話す西形さん。

法医学医とは、どんな仕事ですか?
西形
 事件や事故で亡くなった方や、死につながる疾患がなく突然死した方の死因を明らかにする仕事です。医師の仕事というと、医療現場で治療をするイメージがある方が多いかもしれませんが、私の職場は大学です。得られた知見は事件の真相解明や事故の予防、今後の医療に役立てることで、社会に還元されています。

お仕事の流れを教えてください。
西形 仕事の依頼者は主に警察です。事件性がある、または疑われるご遺体は「司法解剖」を行います。事件性のないご遺体は「行政解剖」を、または解剖はせず検査のみの「死体検案」で判断します。警察官などから話を聞き、身体の断面を撮影する「CT機器」で検査してから解剖や検案に入ります。
死因は発見状況やCTの検査である程度絞ることができますが、確定には通常、解剖後2~3ヵ月かかります。肉眼では確認できない病気や感染症、薬物中毒などの可能性を探るため、血液や尿を調べたり、内臓の組織を顕微鏡で検査したりする必要があるためです。また、生存者を直接診断あるいは写真や動画を見て、傷のでき方を警察などへ説明することもあります。大学教員ですので学生の講義や実習ももちろん担当し、学会発表や論文執筆、企業や一般向けの講演会の講師を務めることこもあります。

年間どのぐらいの解剖や検案をされているのですか?
西形 法医解剖ができるのは、福島県では福島県立医科大学のみ。3人の医師で解剖は年間約150件、死体検案は約200件行っています。死因診断は私の力だけではなく、ほかの法医学に関わる医療職や警察官などのサポートがあってできること。決定的な死因が見つからない場合も多いです。

どんなお仕事が大変ですか?
西形 傷を一つひとつ確認しなければならないため、外傷が多いと大変です。解剖は少なくても2、3時間、長ければ8時間以上かかり、立ちっぱなしです。また、解剖の所見をまとめ、鑑定書を作成する作業も時間がかかります。文字数は短くて5千字弱、長ければ1万字を超えることもあります。

やりがいを教えてください。
西形 事件捜査の一翼を担えることです。過去には、自分が作成した鑑定書をもとに警察官が容疑者の取り調べをしたところ、自供につながったケースがありました。また、解剖は確認作業になるのが一般的ですが、解剖時に事件解決につながる決定的な所見を見つけられるとやりがいを感じます。

法医学医を目指したきっかけを教えてください。
西形 身近で医師を含む医療関係の仕事をしている人が多いこともあり、中学生ぐらいから医師になりたいと思うようになりました。高校生の頃に法医学をテーマにしたドラマ「きらきらひかる」を見た時に、捜査に携わって謎を解明するのがおもしろそうで、法医学に関心を持つように。ところが、大学に入って法医学講座の実習に参加したら、なんとなく満足してしまって。卒業後は、手術で劇的に人を救えることに魅力を感じて外科医になりました。

なぜ再び法医学医を目指すようになったのですか?
西形 3年間の外科医生活は、激務が続きとても大変でした。そんな時にふと、法医学の実習が楽しかったことを思い出して。教授に相談して大学院に入って学位を取り、現在の職場で法医学医の仕事ができるようになりました。外科医として勤務した時に得た知識や経験は、今でもかなり役に立っています。

西形さんが行っている、禁煙に関する研究や活動についても教えてください。
西形 法医学を通じて、予防医療の重要性を痛感しています。どんなに気を付けても病気になることはありますが、リスクを減らすことはできます。特に重要なのは歯周病と動脈硬化の予防。これには禁煙が効果的です。生前から明らかだった病気以外での死亡や死因不明の死亡を「異状死」といいますが、私は異状死と喫煙の関係について調べています。5年間で解剖・検案の対象者約2千人を調査したところ、一般の20歳以上と比較し異状死者の喫煙率は男性で約2倍、女性で約4倍でした。
私は受動喫煙の問題が明るみになっていなかった高校生の頃から禁煙活動に取り組んでいて、学校の職員室や、よく行く飲食店など、身近な場所から禁煙を呼びかけ実現していました。法医学医の仕事がタバコの危険性を伝える活動につながるとは、思ってもみませんでした。

法医学に興味を持った子どもたちにメッセージをお願いします。
西形 
法医学医になるには医師免許が必要ですが、ほかの医療職でも法医学に関わることができます。例えば歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、事務員など。施設によっては資格がなくても解剖の補助ができる技術補佐員という職種もあります。興味があればぜひ、何らかの形で関わってもらいたいです。

解剖室の様子。

解剖で使う器具はご遺体の中などに紛失するのを防ぐため、壁にかけて保管されています。

プロフィール

 

【お名前】
 西形さん
【最終学歴】
 福島県立医科大学 大学院博士課程
【座右の銘】
 千里の道も一歩から
【趣味】
 ゴルフ


※この記事はaruku2025年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。