伝承者さんを訪ねる【会津伝統野菜】 会津の食文化を支える在来種
「にしんずし」 初夏から夏に採れる山椒の若芽と、新潟からにしん街道で運ばれていた鰊で作るにしんの山椒漬けは、会津らしい保存食。写真は1年を通して楽しまれた郷土料理に、旬の枝豆を添えた一品
左から「枝豆と山芋の和え物」「五目豆の煮物」「夏ねぎの酢味噌和え」
「会津農書」がバイブルという平出さん。伝統野菜の研究や、郷土の食を農業や観光に活かす幅広い活動をされています。(食文化研究家 平出美穂子さん)
会津では、夏の野菜を保存し、冬の料理にも使う。
会津地方は、厳しい気候風土と肥沃な大地の恩恵を受けて、独自の食文化を創って来ました。この食文化の一翼を担うのが会津伝統野菜だと、食文化研究家の平出さんが教えてくれました。「夏に収穫される豆類は打豆として冬の大事なタンパク源になりました。煮物、焼物として夏の食卓に並ぶナスは、切干しで保存して、冬はけんちん汁などに使われるんです。」
「古い記録が残っているのも会津ならでは。1684年に佐瀬余次右衛門が書いた『会津農書』は、日本最古の農業書です。これがないと私は研究ができない(笑)」。江戸前期に土や水を科学的に分析して作らせた、この土地に適した野菜が、今に伝わる「伝統野菜」です。
①余蒔きゅうりは、青臭さが少なく、種のまわりに独特の甘みがあります。油にも合うのでソテーしても美味しい!会津の夏には、会津丸茄子の「田楽」や、茄子と余蒔きゅうり、みょうがを醤油で食べる「なすだし」が欠かせません。
②平出さんおすすめの、会津丸茄子そうめん。みりんと醤油で炒めた茄子を、冷たいそうめんにのせ、シソの葉を飾っていただきます。きめ細かく、実の詰まった会津丸茄子は、煮ても焼いても蒸しても、しっかりした味わいです。
③平成24年に加わった、福光赤すじニンニクは会津美里町の在来種。肉質が緑がかった白色で、ねっとりとした粘りと、辛さの中に旨みがあります。素材に絡みやすく、刺身等の薬味にぴったり。
種を守り、味の故郷を創りたい。
「会津伝統野菜」を作る生産者さんのお一人が、「人と種をつなぐ会津伝統野菜」の長谷川さん。消えかけていた会津在来種を守るため、生産者・飲食店・農林学校が連携して活動しています。「途絶えていた『余蒔きゅうり』を作らないかと種を託されたのが始まり。※F1種でなく、伝統の野菜で国内外からの観光客をもてなしたいと思い作り始めましたが、最初は全然売れなかった(笑)。幼稚園の給食に採用され、きゅうり嫌いの子供達がこれなら食べられると言ってくれたのが自信になりました。今は会津農林高校が種の保存に協力してくれて、野菜を守る体制ができた。子供の時に食べた味は忘れません。伝統野菜が味の故郷になるといいと思っているんです。」
人と種をつなぐ会津伝統野菜 会長 長谷川純一さん
長谷川さんは、自然な姿で育つ野菜は味が濃いと、伝統の農法を守り続けています。
※F1種:一世代に限って実を収量できる品種改良種。毎年種を買って育てる農作物です。
会津伝統野菜が買えるお店
道の駅あいづ湯川・会津坂下
8月は「余蒔きゅうり」「会津丸茄子」「真渡瓜」「かおり枝豆」「慶徳玉葱」が旬を迎え、後半には「会津小菊南瓜」が出始めます。スーパー・小売店、「道の駅あいづ」などで購入が可能。伝統野菜を食べられる飲食店も多数あります。
会津伝統野菜を作り、種を守る重要な役割を担う会津農林高校。道の駅あいづ湯川・会津坂下には、生徒さんが作る会津伝統野菜も並んでいます。今は、会津丸茄子、会津小菊南瓜、慶徳玉ねぎ、かおり枝豆、余蒔きゅうりが旬。
SHOP INFO
道の駅あいづ湯川・会津坂下
河沼郡湯川村大字佐野目字五丁目78-1
営/9:00-19:00(季節により変動有)
休/無休
館内には野菜バイキングが好評の農家レストラン「くうべえる」も。
※この記事はaruku2015年8月号に掲載したものです。