ロボットに秘められた無限の可能性を僕は信じています。
ロボットエンジニアとはどのような職業なのですか?
河野 皆さんの生活がもっと豊かになる新たなロボットの設計、開発を行うのが僕たちの仕事です。一口にロボットエンジニアといっても、大きく分けて「センサー」「知能・制御」「駆動系」の3つの専門分野に分かれています。人間で例えると、センサーは五感、知能・制御は頭脳、そして駆動系は手足のことですね。その中で、現在僕が担当しているのは、センサーから得た信号をもとに、ロボットの動きを決める「プログラム」の開発です。“コレが起きたら次はこの動作をやって、その次はコレをやって…”などロボットの動かす順番を決めることで、知能・制御に当たりますね。ただこれら3つの知識は全て1つに繋がっていて、ある程度把握していないとロボットの開発は出来ません。だから、ロボットエンジニアにはセンサー、知能・制御、駆動系の知識を広く・浅くでよいので、理解することが重要です。
河野さんは今どのようなロボットを開発しているのですか?
河野 現在は東日本大震災のある教訓をもとに、会津大学や他の企業さんと共同で、災害対応小型ロボット「スパイダー」を開発しています。僕が経験したことではないのですが、震災当時、福島県にはロボット開発を行っている企業や大学があったのにも関わらず、動かせるロボットがなかったそうです。電源や不具合など原因はさまざまですが、開発者にとってそれが何より悔しかったと先輩エンジニアの方がおっしゃっていました。震災が起きたときにすぐさま動けるロボットを作る、それこそがこの開発事業の始まりです。
現在どれくらい完成しましたか?
河野 基本的な構造はできましたが、作業を行うまでに達していないのが現状です。商品化するまでには、コスト面や機能性などの問題をクリアしなければならないのに加え、災害対応ロボットで一番難しいのが、平和時の活用方法なんです。災害時を想定して作っているので、何か起きないと使えない、だけど平和時に使用しなければ、震災が起きても操作できる人間が誰もいないという最悪の事態に陥ってしまいますから。そこで僕たちが考えたのが『教育面での活用』です。会津大学と共同開発することで、学生さんたちにはより高度な知識、さらに操縦スキルも身に付けてもらえるので、もしもの時でもすぐに対応することが可能になるんです。ただ、ロボット開発には解決しなければならない課題はほかにも幾つもあります。
他にはどのような課題があるのですか?
河野 今後、人工知能を持ったロボットが増えるという定説がありますが、開発者側から見るととてもハードルが高いことです。特に安全性なんかを見ても、機械はそれなりにエネルギーをもっているモノで、今作っているロボットだって、キャタピラーの部分に指を入れれば簡単に切れてしまいます。ただ、その問題を解決するとなると特別なセンサーが必要になり、価格も必然的に上がってしまいます。どんな方でも安心・安全に使用できるロボットを製作するということは簡単なことではありません。
河野さんの今後の目標を教えて下さい。
河野 まずは平和時の活用方法を考えながら、製作中のロボットを実用できるまでにしたいです。ロボット開発の魅力は、“完成”という概念が無いこと。スマートフォンだって、あれが完成品なのか、それとも未完成だから定期的にアップデートが必要なのか、人によって捉え方は変わりますよね。ただ、完成がないということは、無限の可能性を秘めていることだと僕は思うんです。技術も進歩し、最近だと便利なロボットがどんどん開発されています。課題はまだありますが一家に一台ロボットがある、そんな未来を実現するために、僕は今後も高度なロボットを研究し、カタチにしていければと思います。
Q&A
Q.ロボットエンジニアになるためにはどうすればいいの?
A.まずは工業系の専門学校や大学に進むことを目標にしましょう。ただ河野さんのお話にあったとおり、ロボット開発には幅広い総合的な知識が必要です。進路を選ぶ際、ロボット全般の知識を学べる学校なのかを、HPやパンフレットなどで調べておくとよいでしょう。
Q.どんな能力が求められるの?
A.開発に失敗はつきものです。なので、なぜ思いどおりに動かないのかを検証し、問題を諦めずに解決する根気強さ、さらに1つの部分にこだわらず、全体を見通す視野の広さが原因究明の鍵となるでしょう。
Q.どんなことを勉強すればいいの?
A.ロボットを開発するうえで、理数系の知識は必要不可欠です。ロボットエンジニアを目指している方の中で、理数系が得意という方は応用的な知識を。逆に苦手という方はまずは苦手意識を克服することかから始めましょう。
- 株式会社アイザック 河野 智也(こうの ともや)さん
- 出身地
- 茨城県ひたちなか市
- 出身校
- 千葉工業大学 先進工学部
- 休日の過ごし方
- 映画鑑賞、読書
※この記事はaruku2017年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。