限られた時間の中で誰かの“想い”を伝える、それが僕の仕事です。
CMプロデューサーの仕事内容を教えて下さい
中村 企画立案~仕上がりまで、CM制作の全ての工程を統括するのが主な仕事です。具体的に言えば、依頼を受けたCMの方向性を決めることから始まり、予算の管理やスケジュールの調整、最終的な作品の仕上りの確認など仕事内容は多岐に渡ります。プロデューサーと聞くと、どこか華やかなイメージが浮かぶと思いますが、ロケ地の手配やお弁当の注文など、裏側の仕事だって沢山あるんですよ。
下積み期間が必要な職業だと聞きますが、中村さんもそのような経験を?
中村 もちろん、僕も最初はアシスタントから始まりました。学生時代は映像サークルに所属し、自主制作の映画を作ったりもしたのですが、実際に現場に出てみると今までの経験とかけ離れたプロの世界。当時は先輩プロデューサーに1から教わりつつ、本を読んで広告の考え方や映像の基本原理などを自分なりに勉強しましたね。
実際にプロデューサーになってみていかがですか?
中村 やりがいを感じる一方、大変だと思うことはありますよ。CMは映画などと違ってあくまで“広告”です。単に面白ければよいというではなく、15~30秒と限られた時間の中で、観た方が「これ欲しい!」「ここに行ってみたい!」と思わせるような作品でならなければ意味がないのです。そのために打ち合わせを重ね、どうすれば効果的なCMになるのかを考えるのですが、相手側が望むことと、僕たちのアイディアが必ずしも一致するとは限りません。その際、お客さん側には、「ターゲット層的にもっとこうした方が良い」などのアドバイスをしたり、制作スタッフには、意向に沿った作品に仕上がるように指示を出したりと、お互いの考えを調整するのも僕の仕事です。もちろん、最終的な決定権はお客さんにありますが、先方の意向を汲み取りながらも、視聴者に響く表現のバランスを取るの、今でも難しく感じますね。
表現者ならではの大変さがあるのですね。
中村 そうですね。だけど、相手側の狙いと僕たちのアイディアが上手くマッチングしたときは本当に面白い作品が生まれるんですよ。以前、あるお笑い芸人を起用した飲食店のCM制作に携わったのですが、お二人の面白さが引き立つようにと、掛け合いをメインとしたコント形式の企画を立てました。お客さんも面白いと快く了解してくれて、放送するやいなや、大反響を呼んで客足が大きく伸びたんです。僕が企画・プロデュースした作品で目的を達成できたということは凄く嬉しかったですし、なにより誰かに貢献できたことは何ものにも代えられない満足感を覚えましたね。
CMプロデューサーを目指すお子さんにアドバイスをお願いします。
中村 映像業界を目指すのであれば、多くの映像作品に触れてみてください。DVDによってはメイキング映像が収録されていて、とても刺激になると思います。また、映像に限らず本や漫画、アニメなど自分の好きな作品がなぜ面白いのか考えてみてください。面白い展開には共通点があり、それを吸収していけばきっと活かされるはずです。最後に夢を諦めないでください。どんな職業であれ、かけがいのない“やりがい”があります。今思い描いている夢を大切にして、どこまでも追い求めてみてくださいね。
Q&A
Q.どうすればCMプロデューサーになれるの?
A.映像制作のプロダクションや広告代理店に入社し、アシスタントから除々にステップアップしてプロデューサーになるのが一般的です。実際に現場に出てから学ぶことも多くありますが、映像関連の大学や専門学校に進学し、基礎知識を身に付けておくのが良いでしょう。
Q.資格は必要なの?
A.なるための特別な資格はありません。しかし映像音響処理技術者資格認定やCGエンジニア検定など、映像産業に携わる資格は幾つかあり、これらを取得しておくと就職する際に有利になります。
Q.どのような能力が求められるの?
A.映像の知識のほかに、大勢のスタッフをまとめあげる「リーダーシップ」やスケジュールを調整する「計画性」、さらにクライアントの売り上げやイメージアップに繋がるための「マーケティング」の知識などが必要とされています。
- 福島クリエーティブ 中村 高行(なかむら たかゆき)さん
- 出身地
- 福島県郡山市
- 出身校
- 法政大学 文学部 日本文学科
- 休日の過ごし方
- 映画鑑賞、読書
※この記事はaruku2017年8月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。