女性のための医療コラム
「イライラ、食べ過ぎ、眠れない…
それって、PMS(月経前症候群)?」
多くの女性は、月経開始の7~14日前になるといろいろな不快な症状を訴えます。イライラや不安、不眠や集中力の低下、にきびや便秘・下痢などなど…。時には吐き気、胸やお腹が張る、偏頭痛、過食に悩まされる方もいます。
アメリカの産婦人科学会によれば、「上記症状が過去3カ月以上連続し、社会的または経済的な能力に明確に障害があること」をPMS(月経前症候群)としています。より重い症状の場合はPMDD(月経前不快気分障害)と呼ぶこともあります。
PMSは排卵を境に起こる「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類のホルモンバランスの乱れが影響していると言われています。これらのホルモンは体をコントロールする神経伝達物質や生活リズムに影響を与え、体のバランスが崩れやすくなります。これらのホルモンが肝臓で適正に分解・除去されないと、新たなホルモンバランスが生じ、さらに不快な症状が起こります。
PMSを悪化させる原因は様々で、大量のカフェイン、砂糖、アルコール摂取や、睡眠、運動不足、慢性的ストレス、環境ホルモン(最近はあまり耳にしなくなりましたが)などが挙げられます。治療のために処方される低用量ピルも、適正に分解されないとそれ自身が悪化の原因となることもあります。
PMSの悪化を防ぐには、普段から栄養バランスの良い食事と、定期的な運動、そして十分な睡眠をとり、ストレスを溜めない生活を送ることが望ましいでしょう。それでも改善が見られない場合は、多嚢胞性卵巣や子宮内膜症など女性特有の病気が隠れている場合もあるので、「生理前だからしょうがない」と我慢せず、婦人科医に相談してください。
お話をうかがった先生
富永國比呂先生
1975年、岩手医科大学医学部卒業、東京衛生病院産婦人科医長を経て、米国ロマリンダ大学大学院博士課程修了。日本産科婦人科学会専門医、日本性感染病学会会員、医学博士、米国公衆衛生学博士(Dr.P.H.)、国際個別化医療学会幹事、Personalized.Medicine Universe査読委員。
※この記事はaruku2018年2月号に掲載したものです。